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雅さんは空也のお母さんの妹。以前一度だけ会ったことがあって、週刊誌に空也の結婚相手と記事にされたことがある。
「………でもロイは見合いだって……」
「その場で断って、一応相手の顔を立てにあいさつに行っただけだ」
「……そうだったんですか……私はてっきり……。そう言えばあの女の人は誰ですか?」
「どの女だ?」
「あっ。えっと、淳の送別会の日に街を一緒に歩いてるのを見ました。ロングヘアの白い品のいいスーツを着ている女性でした」
空也が首を傾げて考える仕草をする。
「それは広方だ」
「広方……さん? 編集者の?」
「ああ」
「広方さんって女性だったんですか?」
「ああ」
男の人とばかり思っていた。
空也から聞くと取り立てが厳しくて口うるさくてしつこいって……。
「男だと思ってたのか?」
「ええ……」
「広方は女だ。あいつの見た目に騙されるなよ。あいつは見た目と全然違うからな」
空也も騙されたのか悔しそうに舌打ちをした。
「それで、誤解が生じて『別れてください』に繋がったのか……」
「……はい」
小さく答える。
「あ、でも。香水が……」
「香水?」
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