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蜜月
箱を空也が開けて、中の物を取り出す。
赤いビロードの細長い箱が2つ出てきた。
「何ですか?」
「コレを渡そうと思って、今日は食事に誘った」
ベッドに向かい合って座る。
赤い蓋を空也が開けた。
「時計?」
文字盤は中が透けて見えて小さなネジが細かく動いている。
一つは金色で、一つは銀色。
「この時計は止まることはない」
自動巻ということらしい。
空也が銀色の時計を取り出して、腕に付けてくれる。
その時計の上にもう一つの時計を重ねる。
文字盤のネジの隙間が重なって文字が出る。
「お前は俺が許してやるまで側にいる。そう返事をした」
さっき答えた返事はそういう意味を含ませたんだ……。
「初音。不安にさせて悪かった。お前が倒れる前に気がつくべきだった」
「……空也」
金色の時計を渡される。
空也の腕を取ってその腕に時計をはめる。
文字盤の隙間で描かれた文字。
『toL』
……愛している。
「不安になったら聞けばいい。怒ったのなら叫べばいい。泣きたい時には泣けばいい。俺はいつでお前を受け止めてやる……素直に甘えてくるお前は可愛い」
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