小説家~その後①

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「時谷センセは何も言わないのか?」  時谷センセとは私の恋人。  時谷空也(トキタニ クウヤ)。推理小説家で株などもやっていてマンションも持っている悠々自適な独身貴族。  どこを気に入ったのか私の恋人。  淳と同じくらいの長身で毎週ジムに通って逞しい体躯をしている。 「時谷先生は何も言わない……です」 「それなら何にも不満なんてないだろ」 「そうなんですけど、どうしてなのか知りたくなるじゃないですか」 「俺なんか気にしたことなんかないけどな」 「あなたは考えなさすぎなんです。直樹君と一度相談した方がいいですよ」 「そうか? でも、相談したところで子どもができるわけでもないんだし」 「そうなんですけど……」  問題はそこなのだ。  先日結ばれたばかりなのだけれども、そこから前に進まない。 何もないわけではでない。  でも、それだけなのだ。  期待していた物と違ったのだろうか。  痛がったことが原因だろうか。  何かするべきだったんだろうか。  やっぱり風呂に入った方がよかったんだろうか。
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