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まるで自分ではないような綺麗な被写体。
スタジオの中で撮影して海や空は合成。
来週には雑誌にも掲載されるし、街頭にも張り出される。
先に空也に見せた方がいいのかな……。
こんなに綺麗に撮ってもらえるなんて……。
この出来ならモデルが私なんて、とても結び付かない。これなら空也も機嫌が悪いことは無いかも。
倉庫の隅にポスターを片付けて事務所のデスクに戻った。数日後。
「初音。これ、出る時に捨てといてくれ」
燃えるゴミの日。
仕事に出る時に玄関で透明のゴミ袋を渡された。
「はい。行ってきます」
いつものスーツとネクタイ姿。鞄とゴミ袋を持ってエレベーターに乗った。
マンションには2基のエレベーターが設置されていて、そのうちの1基は奥に鏡が付いている。
その鏡に見覚えのある茶色い筒が映っているのに気が付いた。
透明のゴミ袋は中に入って見える。
「これって……」
ゴミ置き場に行って袋の口を開く。
茶色い筒に貼られた配達記録。
差出人は『N-スタジオ』。宛名は『時谷空也』。
筒の中を覗いても中には何も入っていない。
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