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あいつも初音のスーツと眼鏡の威力を知っているのだろう。
初音の写真は一枚も持っていない。
撮影している若塚の後ろに立って、数ショット希望を伝えて、ついでに撮させた。
だから、協力してやった。
スタジオに入る前。あいつが出迎えに出てきて、「早く終わらせたかったら、宮に魔法をかけて」と言った。
スタジオに入るとその意味がすぐに分かった。
可笑しくなるほど緊張している初音。
緊張を解いて、色気を引き出して欲しいと言うことらしい。
その鎧と盾の下にある初音に気が付く辺り……見る目のあるカメラマンなのだろう。初音の緊張を解くのも色気を引き出すのも簡単だが、それを見ているのもイライラするので、外で待っていた。
「ご協力ありがとうございました。宮をよろしく」
そう言って、初音の鞄を渡すと初音の車に乗ってあいつは帰っていった。
どんな写真が出来上がるのか……。
腕枕をされている初音が身じろいだ。
あれから3カ月近く経って届いた郵便物。
差出人は『N-スタジオ』。大判のポスターと同サイズの写真。
スナップ写真が数枚。
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