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~・初音視点・~
気も漫ろに仕事を終えて急いでマンションに戻る。
「お帰り」
玄関で迎えられて、いつものようにキス。
「空也っこれっ」
鞄の中から配達記録の用紙を取り出す。
「若塚さんからでしょう。あのポスターどこにやったんですか?」
靴を脱いでリビングの方に向かう空也を追いかける。
「飯出来てるぞ」
「それよりポスターはどこですか?」
リビングを見渡して、次に寝室に向かう。
寝室から書庫を探して、空也の自室の前で止まる。
「ここにあるんでしょ。空也」
「一枚くらい恩恵に与ってもいいだろう?」
テーブルには鰈の煮付けと温野菜のサラダが置かれていて、空也はご飯をよそっていた。
「だ、ダメです。返してください」
あんなポスターを持っていられるなんて、落ち着かない。
恥ずかしいし、なによりその前後の事を思い出してしまう。あれからいろいろあったし、もうずいぶん前の事だけど。空也が『独占欲』と言って、激しく感情を露わにしてくれたのが嬉しかったのを覚えている。
大事な思い出ではあるけど、あのポスターを空也が持っているというのはちょっと……。
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