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はじめに
はじめに、光があった。
一条の光が閉じたまぶた越しに差し込んで、アタシは眩しくて目が覚めたわ。随分と眠っていたのだろうか。まだ、身体がうまく動かせない…。
自己紹介が遅れたわね。みなさん初めまして…と喋ろうとして、その声の野太さに自分で引いたわ。元々の地声が、女性にしては低い方ではあったのだけれどね。
ふと我が手を見ると、華奢ながらごつごつと骨ばんだ甲が目についた。また身体には高校の制服らしき衣服をまとっており、それはどう見ても男性物である。
これは…起き抜けで、まだ脳がよく働かないけど。この状況、話には聞く「転生」と言うやつでは?読者様にとっては、それこそ何百回も見慣れた展開じゃないかしら。しかし制服はどう見ても日本国のもので、また背景はどこかの学校の屋上である。いわゆる、「異世界」ではないのだろうか。
どうあれ、アタシは転生した…?つまりその大前提として、命を落としたの…?混乱するアタシに、背後から突然声をかける者がいたわ。
「あーっ。やっと目を覚ました。お寝坊さんは、嫌われるゾ☆覚えてるかな。あたしは、君の幼馴染の如月桃だよん!まずは、あなたの名前と誕生日を教えてくれるかな?」
うっさいわね。二人称、「君」か「あなた」で統一しなさいよ。人が状況を飲み込めず混乱してるのに、何なのよアンタ…。ってか、実はよく知ってる人物だったけど。理由は後述。
「進藤、まひろ…。誕生日は、9月15日」
無意識にアタシの口は動いて、背後の彼女に返答していた。ってかアタシ、本名言っちゃった…。何か、それらしい偽名のが良かったかしら?まぁ、いいか。男性としても、違和感のない名前だから。
「そうなんだ、ありがとう。まひろ君、改めて『純情☆スクールデイズ(仮)』の世界にようこそ。それじゃ次に、あたしの誕生日は覚えているかな?」
そのように言って、高校生にしては大きめの乳を揺らしながら彼女が詰め寄ってきた。その時、パソコンのOSで言うとV○sta並のアタシの脳細胞が完全に理解したわ。
タイトルから察された読者様も多かろうと思われるが、ここは恋愛ゲームの世界。それも、アタシが青春時代を費やした…。この辺りも、後述するわね。差し当たっては、目の前の彼女をどうするか。
気づけば、彼女の乳を目で追っている自分に気づいたわ。これでも元は女性なので、巨乳とかカケラの興味もないんですけど…。これって、身体は男子高校生のそれに転生したと言う証かしら?
どうするのアタシ。このまま、乳に目が眩んで偽の幼馴染とカップルになるの?いや、ならない(反語)!アタシには、この世界でなさねばならない使命がある。それに、目の前の乳女に教えてあげなければいけない事があるのよ。
「幼馴染は、負けフラグだって事をな!知らねぇんだよ、てめぇの誕生日なんざ!」
すでに、男子高校生としての口調にある程度慣れている自分がいたわ。現実世界って、男性も女性もそんなに口調って違うものではないしね。
言い忘れてたけど、アタシって元の世界で柔道の有段者なのよ。身体が変化して動きが鈍るかと思いきや、むしろ冴え渡っているわ。流石は、現役男子高校生と言う所ね。身体が軽い、こんな幸せな気持ちで戦うのは初めて!まぁ、一回死んでるんだけど!
相手は柔道着ではないが、代わりに制服のリボンを掴めば十分でしょう。またもう一方の手は、彼女の肘あたりをしっかりと掴んだ。払い腰!技の詳細は省くけど、彼女の重心を崩して思いっきり投げ飛ばしてやった。言ったとは思うけど、ここは学校の屋上。柵を飛び越えて、飛び落ちていく彼女の姿が遠目に見えたわ。
「よし、悪は滅びたぞ!」
安心なさい。ギャグテイストの作品だから、ゲームの世界で死んだりする事はないでしょう…。多分ね。
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