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一年生・一学期
4月7日 純情高校 晴れ
改めまして、みなさんこんにちは。進藤まひろ16歳よ。言ったように9月生まれなので、この世界ではまだ誕生日が訪れていないのだけど…。まぁいいでしょう、数え年で。その方が、分かりやすいだろうしね。
今日は、舞台であるこの学校の入学式。ゲームで言う所の、オープニングに相当するわ。
その前に、元の世界のアタシについても一応ざっと紹介しておきましょうか。取るに足りない、情報ではあるけれど…。某製紙会社にて、研究員として働いておりました。日々変わるデータとにらめっこして、それを上司に提出するだけの毎日。
え?それじゃこの世界に転生した理由は、ブラック企業ゆえに過労死したのかって?それとも、よくある異世界トラック?どちらも違います。正確には、竜巻で吹き飛ばされてこの世界に来ました。
…聞こえてなかったらいけないので、もう一度言いますね。竜巻で吹き飛ばされて、この世界に来ました。いえちょっととある理由で生活が困窮していたので、群馬の片隅に掘っ立て小屋みたいな家建てて住んでたのね。そこに、日本国とはとても思えぬ巨大な竜巻が到来して小屋ごと吹き飛ばされアッサリと。
…そうはならんやろ、って?今現在、実際にこうしてなっとるやろがい!未だ自分が亡くなったと言う事実に慣れないけど、まぁいつまでウダウダしていても仕方ないわ。それよりも、まずは今目の前にある現実を受け入れなくては。
「…よく、ぬけぬけと何事もなかったように登校出来るわね。あなたみたいな人が、幼馴染だなんて…。金輪際、あたしの前に顔を出さないで」
あら、生きていたのね如月桃。やはり、ギャグ寄りの世界だったようで何よりだわ。心配しなくても、アンタの前になんて二度と顔を出さない。
繰り返すけど、ここは(本来は男性向けである)恋愛ゲームの世界。入学式当日、幼馴染である彼女と再開を果たすのだけれど…。
ちょっとしたイレギュラー(入学前に屋上から投げ飛ばす)で、すでに好感度が最低になっているようね。本来はあり得ない状態だけど、まだまだゲームに未知の部分があって何よりだわ。
ところで前置きが、大変に長くなったわね。アタシには、この世界でやり遂げる事があると言ったわ。それは…。
「おい、どうしたんだよ彼女?彼女って、あの如月桃だよな?成績優秀でスポーツ万能、性格も良いと三拍子揃った…。入学時点で、すでに学校中の男子から注目の的だぜ。そんな彼女を、あんなに怒らせるなんて…」
キタキタキタァー!今、隣の席から話しかけてきた男子。ってかこの世界でも、やっばり席が隣なのね。あまりに耳が幸せなので、アタシはちょっと黙ってます…。
「おっと、自己紹介が遅れたな。俺の名前は、友崎あまねってんだ。『あまね』でいいぜ、よろしくな!女の子の情報なら、何でも俺に聞いてくれ」
ん!?今、何でもって言ったわね?それじゃまずは、あんた自身の3サイズを教えなさい…。って、年甲斐もなく少し興奮したわ。失礼。
彼こそ、アタシがこのゲームに青春を費やすようになった全ての元凶。とある中古ゲーム屋(最近見ないわね)で、パッケージ裏の彼の顔を見たために人生を狂わされる事となった…。だけど、その事に一片の後悔もしていないわ。
そう言う彼こそ、顔良し顔良し顔良しの三拍子揃っている。あぁ、何度見てもこれと言った特徴のない平凡な顔…(※褒め言葉)。神がデザインしたとしか思えないわ。まぁ、実際には人間の絵師さんがデザインしたのだけれど。この十人並のモブ顔(※褒め言葉)が、アタシの心を捉えて離さない。
声優は、浅○○○郎さんよ。ってか、声も演技も若っか!○沼さんにとって、デビュー当初の作品だったからね。このゲームの出演は黒歴史だと言う風潮もあるようだけど、アタシには聞こえないわ!
彼の魅力を語るには何千文字あっても足りないのだけど、ひとまず今日はここまでにしておきましょうか。兎にも角にも、友人ポジである彼を落とす事こそがアタシの転生した理由って訳。タイトルから、察されていた読者様も多いかしらね。
「あ…あぁ。俺の名前は、進藤まひろ。『まひろ』でいいよ。こちらこそ、三年間よろしくな。あまね!」
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