0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
「も~! 誰か好きって言ってよーっ!」
「知らねえよ!」
学校の帰り道、橋を駆け抜け、ランがオレを追いかけ回す。
察しはついてる。
どうせまた、友だちのひとりに恋人ができたのだろう。
「なんで!? なんでみんな恋するの!? なんでみんなあたしを置いてっちゃうの!?」
「だから知らないって!」
オレは歩道の木に登ってやりすごそうとした。
「逃げんなカケル!」
しかし、ランもよじ登ってくる。
枝を鉄棒代わりにして、オレは公園の広場まで逃げた。
まだランが追いかけてくる。
「だってみんなさ、非モテ同盟組んでさ、老人ホームで女同士一緒に住もうね、って言ってくれたよ! その矢先にこれ! 裏切りじゃない?」
「もう秋なんだから、恋の一つくらいするだろ! 人恋しいんだよ!」
「じゃあ、あんたもしてるわけ!?」
「してるかもな!」
「やだもー! 誰が好きか言いなさいよっ!」
「それこそヤだよ!」
「聞き出すまで、ずっと追いかけるから!」
冗談ではない。
家の近くにある駅の方まで、オレは逃げた。
電気自転車レンタルと、銀行の間を抜ける。
「待て逃げんな!」
逃げるっての!
バス停を通り過ぎ、公民館の方まで向かう。
オバサン連中が道を塞いでいる。着付け教室の生徒か。
「ごめんなさいっ」
オレは体操選手のように横向きで回転して、オバサンたちの上を跳んだ。
階段を駆け抜けて、振り返る。
どうにか、まいたようだ。
だが、ランがエレベーターからやってきた。
「ズルい!」
「何も話さないアンタが悪い!」
オレは、手すりを滑って急降下する。
これは、ショッピングモールまで逃げてやり過ごすか。
「くっそ! 工事中!」
そうだ。モールまでの道は、万博まで改装中だったんだっけ。
バス停をひたすら走る。
「待て待て!」
あんにゃろ、電気自転車借りてやがる!
「ここ、走っちゃダメなエリアだろ」って言いたかったが、ちゃんと車道を渡っている。
そういうところは、ちゃっかりしてるんだよな。
しかし、オレはモールへと逃げる。
電気自転車を駐めるところがなくて、ランがもたついている。
その間に、モール内部へ。
見本のソファに腰掛けて、一休み。
まったく、しぶといやつだ。
「見つけたよ!」
「わっ! いつの間に!?」
立ち上がろうとしたが、ランがオレにのしかかって来た。
「ねえ、誰が好きなの?」
オレは、手首を引っ張ってランに顔を近づける。
「……今、オレに乗っかってるやつ」
ランが顔を離し、「バカ!」とオレを罵った。
「そういうのは、もっとムードのあるところで言ってよ!」
言えって言ったの、お前だろうが!
最初のコメントを投稿しよう!