愛さなくてごめんなさい

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 喪服に袖を通しても、遺影を見ても、遺骨を見ても──私は何も感じなかった。  あの夜、引ったくりに遭い抵抗したところ、怒り狂った犯人に刺されて死んだらしい。  死ぬ直前に、人の怒りは怖いのだと、息子は理解できただろうか──? 私の思考はそれで埋め尽くされていた。  息子の遺骨を持って帰宅し、1番に怒鳴られた。 「お前は息子が亡くなったというのに顔色ひとつ変えないと親戚中から言われた!! いくら言ってもお前はどこ吹く風で聞く耳を持たないからだ!」  いつもより大きな怒声はさすがになんとか聞き取れた。そしてくすりと笑ってしまった。『聞く耳を持たない』ですって。と。  もちろん夫は激昂する──かと思いきや、化け物でも見るような目で私を見て、そそくさと自室にこもった。
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