愛さなくてごめんなさい

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 裁判はすんなりと終わった。  医療費も払ってもらったし、毎日毎日の『昼食代』という名のラブホ代も返してもらったし。しばらく働かなくても大丈夫なくらいの慰謝料もぶんどれたしいい気味だ。  ……けれど。残ったのはお金だけ。達成感と虚しさが混じってなんとも言えない気持ちになる。 「お姉ちゃん! やっと自由だね!」 「自由……?」  妹は眉を下げて、笑った。 「お姉ちゃんは今まで狭い籠の中で飼い殺されて、ずぅっと虐げられてきたの。でもそれももう、終わったんだよ」 「お姉ちゃんは、として笑って生きたらいいんだよ」と、妹は付け足した。  私は、動かなくなった唇の両端を指で押し上げた。
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