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次の朝は、きちんと朝食の支度をした。夫はコーヒーだけ飲み干し、昼食代だと言っていつも通り私のエプロンから金を鷲掴んでいった。
息子は朝食に手をつけず、スクールバックを背負ってさっさと玄関へ向かった。
「あ、朝ごはんは?」
息子は私を一瞥しただけだった。
私は冷めた朝食を泣きながら食べた。3人分の朝食に胃がはち切れそうになりながら、それでも、私は食べ続けた。
買い物に行こうと化粧台の前に座って驚愕した。顔がパンパンに腫れていた。
ああ、どおりで眼鏡をかけてて痛いわけだ。
コンタクトを入れて、帽子を目深にかぶって病院に行った。
事前の申告書には“転んで打った”と記入した。
けれど──
「転んで打ってもこんな傷はつきません。……気分を害したらすみません。……誰かに暴力を振るわれたのでは?」
医者の言葉は、だいたいこんなだった。
耳鼻科にはかかってないから、私の耳がほとんど聞こえないことを医者も看護師も知らないはずなのに、医者はわざわざ筆談をしてくれた。
なぜか自然と涙が出た。
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