愛さなくてごめんなさい

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 私は食後の片付けをして、リビングのソファーでボーッと玄関を見つめていた。  鞄の中の診断書が頭をよぎった。  エプロンのポケットの中のスマホに手が伸びた。  その瞬間だった。肩を押されたと思ったら、頭に強い衝撃を感じた。  ふらふらと体を起こすと、床にポタポタと血らしきものが滴っていた。……少しして、座卓の角にぶつけたんだとなんとなく理解した。 「その大袈裟な手当てはなんだ!? 俺への当てつけのつもりか!?」  姑の前で言うのは憚られたのか、今になって怒りをぶつけてきたんだろうな。と、だいたい何を言っているのかも朦朧とする頭でわかった。  そこへ、何やら外出をするらしい格好の息子が通り掛かり、一瞬目を見開いたけれどすぐに行ってしまった。──まるで他人事のような顔をして。  それっきり息子は帰ってこなかった。
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