第1話、友だちが出来ないと思ったらバツ

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「無視はお前らが伴をバツ呼ばわりするからだろう。無視されてカッとなるのもわかるけど、だからって突き飛ばしたらだめだろ。下手したら大ケガどころじゃなくなるんだからな!」 このときの颯吾の表情に恐れを抱いたようだ。クラスメート2人は勇斗に謝りに行った。 「ぷっ、あいつら、平本にびびってチェキンだなー」 チキンを発音良く言っていた涼矢にも、颯吾は怒る。 「お前も伴に謝れ。オール0点のバツって言ってあいつ傷付けただろ」 「知らねえよ。オレ、あいつらとちがって手を出してねえし、悪いことしてねえ」 「重田……」 「やるのか?」 涼矢が拳をかまえると、颯吾は目を閉じ、勇斗たちの方へ行ってしまった。 「相手にされなくて残念だったね」 樹が言うと、涼矢はふんと鼻で笑い、集合場所へ先に並び始めた。そんな彼に樹はやれやれ顔をしていた。 体育の授業が終わったあと、勇斗は颯吾に話し掛けに行った。颯吾は嬉しそうな表情で振り返る。 「伴、どうした?」 「平本くん、さっき、僕が本当はバツじゃないこと知ってるって言ってたの、どういう意味?」 「言葉の通りだけど」 「ウソだ。もっと深い意味を感じ取ったんだけど」 「伴の考えすぎだよ」 「………」 勇斗は納得のいかない表情で先を行く颯吾の背中を見ていたのだった。
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