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自分って本当にバツだと勇斗は自覚していた。校舎の中にアリがいたか、勇斗は体育座りをしながら、アリが通り過ぎていくところを見つめる。
時間が経つと、勇斗の担任の教師が近くを通ったか、声を掛けてきた。
「伴、体育の授業はどうした?」
「すみません、さっき転んで、ここでちょっと休んでました」
「そっか。大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「でも、傷が出来てるな。カットバンくらいは貼ってきな。オレがあと大丈夫かって聞きたいのは、小テスト全教科0点のことだ。伴、家で勉強してる時間はないのか?」
担任の教師は上着の内ポケットにあったカットバンを取り出し、勇斗の膝に貼りながら聞いた。
「………」
勇斗が黙っていると、担任の先生は優しくこう言う。
「伴が0点を取り続けていると先生が教頭や学年主任に言われて大変だけど、一番大変なのは伴自身だ。友だちにも頼ることしたらいいんじゃないか。ほら、平本とか」
「彼は友だちじゃないです。彼も僕を友だちだって思ってないです。というか、僕みたいなバツ、友だちなんて出来ませんよ」
「こんなところにいたと思ったら、おかしなことを先生に言ってるな、伴」
すでに勇斗を見つけ、担任の教師のやりとりを隠れて聞いていたようだ。颯吾がやってきた。
「平本くん……」
彼の名字をつぶやいたあと、勇斗は下を向いた。
「お前がオレのことを友だちだって思ってくれてなくてもいいよ。でも、オレはお前と友だちになりたいって思ってるから。それにオレ、本当はお前がバツじゃないこと知ってるんだからな」
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