悪魔召喚術

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 ある街の図書館で閲覧禁止になっていた本があった。その本の効果は未知数だが、遠い昔、使われたことがあるらしい。  本の名は『禁忌の悪魔召喚術』となっていた。  閲覧禁止が続いていたが、実際に悪魔が召喚されるなどありえないと文部科学省がその本の閲覧を許可するようになった。また閲覧許可になってもかなり古い本なのでわざわざ借りる人もいないだろうと思われていた。  解禁日当日、文部科学省の予想とは異なり、その日を待っていたかのように借りた者がいた。彼の名前は郡山正太(こおりやましょうた)君。あどけない小学六年生だ。彼は悪魔を必要としてこの日を待っていた。  郡山君は本を借りてウキウキして家に帰ると、本に書かれてある通りに魔法陣を描いて呪文を唱えた。すると部屋を黒い霧が覆い、全身が紫色で漆黒の翼と二本の銀色の角を生やした悪魔が召喚された。  悪魔は身体から紫色の液体を垂らしながら、心も凍るような低く大きな声を放った。 「我を呼び覚ましたのは貴様か。小僧。なんでも……」  郡山君があわてて、悪魔に近寄り人差し指を立てた。 「しー、大きな声を出さないで! 近所に知られちゃうよ。それとぼとぼと液を出さないで絨毯が汚れちゃうから」 「我は悪魔。そんなことよりも……」 「いやいや大事なことだから。悪魔を消滅させる呪文も本に書いてあるから、言うこと聞かないなら読むよ」  悪魔は心の中でなんて生意気なガキなんだと毒づいた。しかし消滅させられては困るので従うことにした。 「汝の言うことを聞き届けよう。声は小さく、我の魔力から溢れ出る液体も零さないようにしよう」
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