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米倉柚子と高橋修平は腐れ縁も腐れ縁だった。
腐れ縁なんてラブコメにしか出てこない単語だろ!と思うだろうが腐れ縁も腐れ縁だった。ド定番の家が隣同士、同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校、同じ高校。
果ては二人の夢が漫画家で、二人はアパートの一室を借りてルームシェアをしながら共に切磋琢磨している間柄だった。
何も一緒に住まなくても…と思うだろうが、柚子が原画を、修平が原案を担当しており一蓮托生して二人は共同生活を送っている。
そこに恋愛感情は一切ない。
21歳の年頃の男女が一つ屋根の下に住んでいて何もない方がおかしいのだが何もないのだ。
今は有名少年誌の新人賞に応募するために日夜ペンを走らせていた。
「ねぇ、修平、そこのトーン間違ってる」
柚子が羽ペンを持って指摘する。
「え?どこどこ?」
「そこ」
すると修平があーと言った風に納得した。
「あ、ほんとだ」
「もう、締め切りまで時間ないんだからね」
柚子は自分のベタ塗りに余念がない。
「へいへい」
そんな時だった。
修平のスマートフォンが着信を告げた。
「あ、由香だ。ちょっと待ってて」
そう言って修平がスマートフォンを片手に自室に引っ込んでいく。
「もしもし?由香?うん、大丈夫、何言ってんだよ。大丈夫だってば」
修平がヘラヘラと笑いながら電話に応答し歩いていく。
ゆかぁぁぁ?
このクッソ佳境な時に女にうつつ抜かしてんのかあのダボは!ぬわぁにが大丈夫だこの野郎!全然大丈夫じゃねぇよボケ!
柚子はペンを折りそうな勢いで激怒した。
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