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次の日、昨夜の痕跡があちこちに残ってしまっている私は、恥ずかしいからグレゴワール様に会いに行くことはできなかった。だからセルジュが一人で王宮に報告をしに行ってくれた。
ソワソワしながら待っているとセルジュの乗った馬車の音が聞こえ、私はすぐに彼を出迎えた。
「お帰りなさい、セルジュ! グレゴワール様はなんて?」
「おめでとう、意外と早かったな、だって。やっぱり、ちょっと恥ずかしかったよ。アドバイスをくれた方にもお礼を言っておいた」
「本当に、いろんな方のおかげね……」
こんなに早く元に戻れたのも、グレゴワール様たちの力があってこそだ。
「ところで、ドロテのことなんだけど」
そうだ、すっかり忘れていた。逮捕された彼女はどうなったんだろう。
「今朝、シワシワの老婆になって死んでいるのが発見されたそうだ」
「えっ! ど、どうして?」
「魔法を人に掛けるということはリスクがあるそうだ。君が魔法を自力で解いたことによって、何倍もの力となって彼女に返ったらしい」
「でも、魔法を掛けたのはギヨームだわ。ドロテは頼んだだけなのに」
「そこはギヨームが一枚上手だったようだ。万が一魔法を返されても自分には及ばぬように、ドロテに返っていくように細工していたんだ。
そして、ドロテは一晩で歳を八十以上取ったように見えたという。恐ろしいが、自分のしたことの報いを受けたってことだな」
「ギヨームは、どうなるの?」
「裁判で有罪となれば死刑だろう。もう、奴のことは気にしないでいいとグレゴワール様は言っていた。王宮で責任を持って処分するからと」
「そう……もう、安心していいのね」
信じられないような体験だったけれど、私たちの絆はより深まった。これからも、ずっとセルジュと仲良く過ごしていけると私は確信している。
「ねえ、セルジュ。私、またこんなぺったんこの胸になってしまったわ。それでもいい?」
「もちろんさ。でもいつかまた、あのふっくらしたリゼットに会えると思うと待ち遠しいよ。
とはいえ今は、少女のように可憐な身体のリゼットを楽しむ期間だ。二倍楽しめてお得だな」
「もう、セルジュったら!」
ポカポカと胸を叩いて怒ってみせる私を笑いながら抱きしめるセルジュ。私たちの幸せは、きっとこうして続いていくのだろう。
【余談】
三十二年後のヴァイオレットムーンの夜のこと。
リゼットは突然十八歳の身体に戻った。昔入れ替わった影響である。
若くなったリゼットを、五十一歳のセルジュは一晩中愛で続けたとか。それはもう、たっぷりと。
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