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ヴァイオレットムーン
「ただいま、リゼット、今日も変わったことはなかったかい」
「お帰りなさい、セルジュ。そうね、今日は家で刺繍をしていたわ」
仕事から帰ってきて疲れているであろうセルジュに、ドロテのことを話して不快な思いをさせたくなかったのだ。
その後夕食を共にし、湯浴みもして寛いでいたセルジュが思い出したように言った。
「そうだ、リゼット。今日は満月だよ。それも、何年かに一度の紫の月だ。ワインを飲みながらテラスで一緒に見よう」
「まあ、素敵ね。確か、前に見たのは八年前じゃなかったかしら」
「そうだったね。僕たちが婚約した年か。そして今年、結婚した年にまたヴァイオレットムーンを見られるなんて、運命的だな」
「ふふ、大袈裟ね。でも、あなたの隣でこの月を見られるのはこれからもずっと私だけなのね。嬉しい」
「可愛いことを言ってくれるね、リゼットは」
セルジュは私の顎を持ち上げ、軽くキスをした。大きくて明るい、ヴァイオレットムーン。紫の光が妖しく私たちを照らす。
「あまりに綺麗すぎて、なんだか怖いわ」
「そうかい? 君のほうが綺麗だよ」
「もう、セルジュ……」
セルジュのキスが激しくなる。お互いの舌を絡め合い、荒い息遣いだけが聞こえる。紫の月明かりに照らされ高まっていく私たち。
セルジュは私を抱き上げ、キスをしながらテラスからベッドへと運んで行った。
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