いつか再訪したい赤

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    「自転車を取りに来てください」  警察から電話がかかってきて、何かと思えば、そんな用件だった。  当時の私は学生で、京都市内に住んでいた。東一条と呼ばれる辺りだ。  一般的には、大学の西側という認識だろう。だが私の学部は南部キャンパスと呼ばれる地域にあるので、私としては「大学の北側に住んでいる」という感覚だった。歩いても10分くらい、自転車ならばすぐの距離だ。  そう、その自転車だった。少し前になくなってしまい「盗まれたのかな?」と思いながらも、大学へ通うだけならば徒歩でも構わないので、放置していたのだが……。  それが発見されたらしい。  警察には盗難届を出していなかったので「盗まれた自転車」という扱いではなく「放置自転車」として、電話がかかってきたのだった。交番の近くに置きっぱなしだったという。  私が「盗まれた自転車です」と告げると、今からでも盗難届を出す必要があるとか何とか、とにかく自転車を預かっている交番まで来るように言われた。  交番の場所を確認すると、方角的には北西で、私のアパートからでも歩いていける距離だった。ちょうど時間もあったので、急いで出発する。    
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