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輪廻Ⅱ『自戒』
七年間飼っていた犬のコロが死んだ。珠緒が生まれた日に祖母からのプレゼント。小学校一年生始業式の朝だった。
「珠緒には始業式から帰ってから話した方がいいかねえ」
祖母の勝代は横たわるコロを撫ぜながら泣いていた。
「今でも後でも同じだ、辛いことは早い方がいい、それだけ早く忘れられる」
珠緒の父、義勝が反対した。
「でもあなた、珠緒が悲しくて学校に行かないかもしれない」
母の玲子が祖母に賛成した。
「さあ時間だよ、珠緒が起きて来るよ。夫婦で決めておくれよ。私はパンを焼いてやろう」
祖母がコロの頭を擦って立ち上がった。
「おばあちゃんおはよう」
「珠緒おはよう」
「おばあちゃん元気ないね」
「分かるのかい、珠緒は勘がいいねえ」
「コロが死んだぐらいで悲しまないで」
「そうだね、って珠緒」
勝代は驚いて焼けたパンを落としてしまった。それを珠緒が拾ってパタパタと叩いた。
「コロが死んだのを知っていたのかい珠緒は?」
「うん、死ぬ前に言いに来たよ」
「コロがかい?」
「うん」
返事をして珠緒はコロの横たわる居間に走った。
「珠緒、コロがね、お空の星になっちゃったの」
玲子が珠緒を抱きしめた。
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