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「癪、今だ」
金原仙人の号令にライフルの弾より早く珠代の前に出た。弾は癪の羽に吸収されるように弾かれる。
テロリストは人の五倍もある癪に驚いた。手を合わせる者もいれば逃げだす者もいる。
「癪、覚えていてくれたのね、ありがとう」
癪の背に乗り大空を飛んでいる。
「子供達は無事だよ」
「あっおじさん」
「君もおばさんになった」
「ありがとう」
「君の勇気には感動した」
「あたし戻らないと、あの子等を放ってはおけない」
珠緒は癪に戻るよう伝えた。
「君のお母さんが重い病は知っているね、お父さんが一人で看病しているがお父さんだって長年の運転業務で腰痛がひどい。お母さんを抱え上げるのも容易じゃない。どうだろう、これからの人生親孝行に継ぎこんだら」
「あの子達は親を殺されて行き場がないの。テロリストに連れて行かれて人殺しに育てられるの。そんなこと絶対に許せないわ」
「君は分かっていない。子供等が死ぬことも神が定めた天寿なんだ。私が君を助けたのは神に背いている。本当は君はあの場で死ぬ、それが君の天寿だったんだ」
「あなたはそれを分かっていたのね?」
「ああ、悩んだ、君の脳に細工して影響を受けた医師との出会いを削除しようかと悩んだ。でも君に救われる多くの子供等を優先した。一度戻って両親に会ったらどうだろう」
「両親に会えばあたしの気は揺らぐわ。それほど強くないもの。お願い、私の記憶を消し去って」
金原はホバーリングする癪の前に出た。
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