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「珠緒、どうした、大丈夫か?」
額に手を当てる。熱はない。
「お父さん、どうして戦争しているの?」
トラックドライバーの義勝には難題である。政治や外交のことなど考えたこともない。
「悪い奴が領土を広げようとしているんだ」
「どうして、あの国はあんなに大きいのに、どうして領土が欲しいの?」
車の質問ならいくらでも答えられる。
「珠緒、お父さんは頭悪いからな」
「お父さんは悲しくないの?人間が殺し合うのに?」
珠緒は布団を被った。義勝にはこれ以上宥めることが出来ない。布団の上から手太鼓であやした。
『神様、どうして神様がいるのに人が争うんですか?神様は本当は私達の味方じゃないんですか?教えてください。そうじゃないと珠緒は神様を嫌いになります』
布団の中で泣きながら祈った。
「ふーっ」
金原の苦手なジャンルだった。珠緒のベッドに腰掛けて頭を掻いた。癪が出て来てフケを喰らう。
「この子が起きるから早く帰れ」
パタパタと羽音を立ててホバーリングしている。
「あなたは神様ですか?」
「ほら起きちゃった」
「あの鳥は神様の使いですか?」
「実はあれは鳥じゃなくて虫の仲間なんだ。それに私は神様じゃない、神様の下働きをしている仙人なんだ」
金原が手で追い払う仕草をすると珠緒が癪を呼んだ。
「可愛い」
仙人の垢や浮き霊を喰らい生きている癪。到底人間から好かれるような容姿ではない。
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