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「可愛い、こいつが?うそっ」
金原も驚いている。癪は珠緒の肩に止まった。
「癪、あたし珠緒、友達になってね」
「ギュッギュッグエッグロ」
癪が鳴いた。
「止めた方がいいと思うよ、君が思うほどいい奴じゃない、いやいい虫じゃないよ」
珠緒は癪とキスをしている。
「汚いって」
金原が注意する。
「それでおじさんはどうして来たの?」
「君が神様を信じないと泣いた。それが私に届いたんだ。本職は転生を叶えるのが得意だが、稀に君のように純真な祈りに苛まされる」
「ごめんねおじさん」
「いいさ、欲の塊が多いからねえ、君を見ていると心が洗われる」
金原は正直な気持ちを伝えた。
「お父さんやお母さんは私が変なとこで泣くから心配しているの。昨日も病院に相談に行っていたのよ。珠緒はおかしいのかしら。おじさん、教えて」
珠緒が立ち上がると癪が羽ばたいた。そして天井の切れ目から消えて行った。
「癪、またねー」
手を振ると癪が旋回した。
「あいつ調子に乗ってるな」
金原が笑った。
「よし、君の額に触れさせてくれるかな」
珠緒は前髪を上げて額を突き出した。金原は右手人差し指の腹を天中に当てた。ゆっくりと小さな額を摺り下ろす。山根まで下げて指を離した。珠緒の寿命は残り27年と162日9時間48分26秒。現在7歳の珠緒は34歳で天寿を全うする。あまりにも早過ぎると金原は不憫に思った。
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