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金原は泣く子は苦手である。そもそも子供はあんまり好きじゃない。
「君はどうしてコロが死んだのに悲しくないの?」
「だってコロが来て私に天国に行くって伝えに来たの。寿命なら仕方ないでしょ。神様がくれた命を生きたんだから」
子供には不思議な力がある。純粋が時に動植物と同じ空間に入ることが出来る。幼児が笑い転げたり泣き通しであるのは、その空間に入って喜怒哀楽を共有しているからである。
「じゃあどうして戦争で人が死ぬとそんなに悲しむの?普通の子はペットの犬の方が可哀そうだと思うよ」
珠緒はパジャマの袖で涙を拭った。
「珠緒、珠緒、入るわよ」
勝代は声が聞こえたので珠緒の部屋を覗いた。
「寝言かね」
勝代は珠代の額に掌を当てた。
「熱い。お前熱があるんじゃないのかい」
金原の掌が脳に沈んでいたせいでまだ火照っていた。
「違うよおばあちゃん、熱はないよ」
それでも勝代は体温計を脇に挟んだ。
「おかしいねえ、珠緒の言う通り熱はない」
「神様の使いのおじさんが来たんだよ。珠緒のことを心配してくれてたよ」
「うなされていたんだねえ」
「違うよ、癪も一緒だよ。可愛い鳥みたいだけど虫だよ」
「変な夢を見たんだねえ、癪なんて縁起が悪いよ」
珠緒は諦めた。一向に信じてくれない。
「明日、学校の帰りにおばあちゃんと一緒に病院に行こう。さあ寝なさい」
勝代が出て行った。勝代が出て行くと転生移動をしていた金原が戻って来た。
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