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「先生、私達にも何か出来ることはありますか?」
「あるさ、先ずはその思いを捨てないで、その思いに向けて学習して、大人になってもまだ、その思いがあるならその時に力を貸して欲しい」
中村医師は冊子を渡した。
「薬一粒飲めば治る子供等がたくさんいる。注射一本で助かる命がたくさんある。私一人じゃ何も出来ないけど、同じ人間にどうしてこんな差があるのか不思議に感じた人達が集まれば何かが変わる。そう信じて行動しています」
珠緒の純粋な心にストレートに響いた言葉である。
「珠緒先生、テロリストが村を襲ってこっちに向かっているそうです」
「子供達を納屋に隠しましょう」
〔みんな、集まって、納屋に隠れるのよ、早くして〕
珠緒は一人一人を納屋の地下に入れた。
〔声を出しちゃ駄目よ〕
ジープが三台小学校に乗り入れた。銃を持った男達が職員を並ばせた。
〔子供等は?〕
痩せて目が窪んだ若い男が校長に銃を突き付けた。
〔子供等は?〕
校長から現地スタッフの頭に銃を突き付けた。
〔子供等は?〕
スタッフは目を瞑る。同時に頭を撃ち抜かれた。
〔子供等は?〕
現地の女スタッフに銃を突き付けた。
〔納屋だ〕
耐えられずに答えた。珠緒が走った。テロリストが追う。珠緒が走った方向は子供等が隠れている納屋とは反対側の鳥小屋である。柱の陰に隠れて追ってきた男を藁用のフォークで刺した。珠緒は小学一年生の時に仙人からもらった名刺がある。それをお守り袋に入れて肌身離さず身に着けていた。親指と中指で挟んで擦ればすぐに来る。だけど遊びは駄目だと釘を刺された。友達に自慢したくて何度か擦ったことはあるが現れなかった。『あたしとの約束守って』名刺を指で挟んで擦り合わせた。
〔いたぞ、撃ち殺せ〕
一斉にライフルが火を噴いた。
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