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「いま着てるドレスの方がずっと気に入ってるから嬉しいわ。ありがとう、めぐみちゃん」
表向きのものではない本心からの無邪気な笑顔に突き落とされる。
……知っていたのか!?
気づいていたのに何も口にしなかったのは何故?
その身に纏うドレスを選んだ際、めぐみに何度も意見を求めた彼女。いったいどういう心境だったというのだろう。
まさか嘉裕のことも……?
いや。むしろ苑子の家が結婚相手について何も調べないわけがない。そこまで考えが至らなかった。
大したことではないから。『大事なお友達』だから。
──敵にすらならないから?
いちいち目くじらを立てる必要もないということか。
この友人はいつもそうだった。決して振りではなく、鷹揚な気持ちで流してくれる。
どす黒く染まっためぐみの卑小な心のうちなど、眩いほどの白さで覆い隠してしまう。
──あたしの中の『黒』は染みついて消えやしないけど、苑子の無垢な輝きの陰で見つけてさえ貰えない。
~END~
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