霊界コンシェルジュ・マキタの多忙なる一日

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(――んっ?)  さっきまで甘木が立っていたところに何かが浮かび上がってくる。何事かと見守っていると、俺と同じスーツ姿になった甘木が再び目の前に現れた。 (あっれ? マキタさん。なんで?) (……! これはもしや)  慌てて左ポケットに手を突っ込むと、案の定、天界からの通達が届いている。  (「アマギ【前世名・甘木稔】を霊界コンシェルジュに任命する。当面は実習生として、指導コンシェルジュ・マキタと行動を共にすること」――だとよ) (えー!)  脱力する俺とは裏腹に、甘木、もとい、アマギは満面の笑みを浮かべている。 (やったー! マキタさんと一緒なら、当分楽しく過ごせそう!)  ――なんだこの人員配置。天界のやつら、絶対面白がってるだろ!   (これからお世話になります、マキタ先輩!) (はぁ……。まぁ、よろしく)  どのみち天界の決定は絶対だ。こいつが使える人材なのかどうかは未知数だが、ガサガサうるさくて子犬のように人懐っこいアマギが一緒なら、当分の間、退屈だけはしなくて済みそうである。 (……じゃあ早速だが。次の仕事は、病院での死亡事案だ。資料閲覧のために、一旦コンシェルジュの詰所に戻るぞ)  ――こいつの気配にすっかり慣れた頃には、俺もずぶずぶにされていたりして。    一瞬よぎった嫌な予感を振り払うように正面に右手をかざすと、俺は詰所の扉を呼び出した。 (わっ、ドア出て来た! すげぇ!) (こんなことでいちいち騒ぐな。行くぞ) (異世界かよ!)と隣で謎のツッコミを入れるアマギを促して、俺たちは扉の向こうへと足を踏み出した。
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