霊界コンシェルジュ・マキタの多忙なる一日

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 霊界コンシェルジュ。先日、今後はそう名乗るようにと天界からの通達があった。理由は謎だ。横文字を使うことによって、怪談じみたイメ―ジを少しでも払拭したいのかもしれない。  人間の死後、死者と最初に接触するのが我々「霊界コンシェルジュ」である。  まずは「死んだ」事実を死者に伝えること。次に、彼らが「自らの死を受け容れた」ことを確認すること。そして、その二つの条件を満たした後に天界から発行される霊界行きの「切符」を本人に手渡すこと。――つまり、死者を「この世」から「あの世」へと導くのが我々の仕事なのだ。  死者の行き先については、我々の知るところではない。渡した切符を手にしたらすぐに、彼らはそれぞれに用意された場所へと送られる。実を言えば、俺自身も元は人間で、死後に渡された切符を手にした時にこの役目を与えられた。だからきっと、霊界コンシェルジュという仕事も「あの世」での行き先の一つになっているのだろう。  ……とはいえ。結局のところ分かるのは自分のことぐらいで。すべてを知るのは、あまねくこの世を統べる「天界」だけなのだ。
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