霊界コンシェルジュ・マキタの多忙なる一日

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(いやー、ごねてみるもんだね。本当に旭と話せるなんて嬉しすぎる)  彼らの家に向かう道中、電車に揺られながら、甘木は俺の体を使って菊池に話しかけている。 (……死んでからもゴタついてるとか、いかにもおまえらしいな)  早々に念話のコツをつかんだ菊池が呆れたように返す。あの後、学食で今の状況を軽く説明したのだが、菊池は驚きながらも冷静に受け止めてくれた。受け答えの印象からすると、甘木よりはずっと分別のあるまともな人間のようだ。 (大体、おまえは死んだわけだし、今後の話し合いなんてする必要ないだろ?) (えー、せっかく再会できたのに。旭、俺に冷たすぎ) (いや、事実を述べてるだけだし) (……そうかもしれないけど……)  いつもはばかみたいに陽気な甘木が珍しくしゅんとしている。 「あの、ところで話し合いっていうのは」  口を挟んだ俺に「ああ、それは――」と菊池が言いかけたとき、車内アナウンスが流れた。電車は次の駅に向けて減速を始めている。 「……次で降ります。詳しいことは、着いてから話しましょう」  淡々と言うと、菊池は鞄を持って立ち上がった。
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