1人が本棚に入れています
本棚に追加
恋しくて切なくて
この物語は、アタシ・けいこ(52歳)の息子・はやと(32歳)がゆりかごの儀式を経てかあさんの元から離れて嫁・ゆうか(29歳)の元ヘ帰ってから1年後の夏の恋物語です。
ゆりかごの儀式から2ヶ月後、アタシたち一家は琴平町から高松市仏生山町に住まいを移した。
はやとの通勤時間を考えて、ことでん仏生山駅の近くにある大きめサイズの2階建ての建て売り住宅を購入した。
残っている貯金と琴平町で暮らしていた時の家を担保にして、大規模な住宅リフォームを施した。
ゆうかさんは、琴平の豪華ホテルのウェディングプランナーの仕事をやめたあと、マルナカ(スーパーストア)に転職した。
夫婦の時間を大切にしたいので、時間にユウヅウがきくパート勤務に転職した。
はやとは、ゆうかさんと結婚をしてよかったと喜んでいた。
アタシはパン屋さんの仕事をやめた後、仏生山町内にある郵便局に転職した。
はやとは、ゆうかさんとラブラブな夫婦生活を送っていた。
しかし…
かあさんであるアタシだけは、今もはやとへの想いが残っていた。
アタシ…
まだ…
はやとが好きなの…
はやとに抱かれたダンナの初七日の夜が…
今でも、忘れられないの…
時は、7月中旬の第3土曜日の朝7時頃であった。
新しい家のダイニングにて…
テーブルの上には、コッペパンとコンソメスープとサラダとベーコンエッグとミルクが置かれていた。
食卓には、はやととゆうかさんの夫婦とアタシが座っていた。
はやととゆうかさんは、仲良く朝ごはんを食べながらゆうべ見たテレビの音楽番組の話題のアーティストの話しや次の休日がいつ空いているのかなどを話していた。
はやととゆうかさん夫婦がラブラブになっているシーンを見たアタシは、大きくため息をついた後、のみかけのカフェオレが入っているマグカップをテーブルの上に置いた。
ゆうかさんは、大きくため息をついたアタシに言うた。
「義母さま、どうなされたのですか?」
「何でもないわよ…大丈夫よ。」
「そうですか…」
はやとは、アタシに言うた。
「かあさん、とうさんが亡くなってからもう12年になるのだよ…そろそろ…いい人でも見つけたらどう?」
「かあさんはひとりでいいわ…とうさんが生きていた時、だいぶ泣かされた…だから…新しい恋はしたくない…」
「しょーがねぇなぁ。」
「いいじゃないのよ…義母さまは義母さまの考えがあるのよ…アタシとはやとはラブラブでいいじゃないのよ…」
「そうだな…ゆうか、ごはんを食べたらパートに行こうか。」
「そうね。」
朝7時45分頃、はやととゆうかさん夫婦は手をつないでパート先へ歩いて向かった。
ふたりの背中を見送ったアタシは、ひとりぼっちで家に入った。
アタシは土日の連休なので、たまっている洗濯物を洗うことにした。
それから50分後であった。
洗濯機の中から取り出した洗い立ての洗濯物をかごにたくさん入れた。
その後、庭の軒下に吊り下げている洗濯物干しに洗濯物を干した。
洗濯のあと、アタシは風呂場の掃除を始めた。
白のブラウス一枚の姿のアタシは、シャワーを使って洗面器やイスなどを洗っていた。
(バシャッ!!)
この時、アタシはシャワーの水でブラウスをビショビショに濡らした。
シャワーでビショビショに濡れたブラウスから、ベージュの花柄のチューブトップと浅ばきのレギュラーショーツと肌が透けて見えた。
シャワーでビショビショに濡れたアタシは、1年前のゆりかごの儀式のことを思い出した。
あの日…
はやとは、お別れドレスを着ていたアタシに抱きついて…
アタシに無我夢中で甘えていた…
そして…
はやとは、アタシが着ていたお別れドレスを脱がして全裸にしたあと、ゆりかごのベッドに寝かせた。
はやとは、全裸になったアタシを抱きながら『かあさん…好きだよ…』と優しく耳元でささやいた後、アタシのくちびるにキスした。
はやとはアタシのくちびるにキスをした後、右のくびすじからKカップの極爆乳にキスをすべらせながら甘えた。
アタシは、はやとと別れることがものすごくつらかった…
だから、はやとへの想いをさらに高めた。
アタシは、はやとに対して『かあさんとお別れをしたら、ゆうかさんの元へ帰りなさい…』と悲しげな表情で諭して、はやとを送り出した。
その後、はやととゆうかさんの結婚式を挙げた。
結婚式のあと、はやととゆうかさんはゆりかごのベッドで全裸になって抱き合った。
はやととゆうかさんが激しいタンキスをしていたシーンを見たアタシは、急に切なくなった。
はやととゆうかさんが激しいといきをもらしながら求め合っていたシーンを見た時、アタシは声をあげて泣いた。
はやと…
かあさんは…
まだ、はやとのことが好きなの…
あの時…
ゆりかごのベッドではやととお別れして、ゆうかさんの元へ帰した…
けれど…
アタシはまだ…
はやとが…
好き…
どうして…
どうしてなの…
乳房が…
しめつけられて…
苦しい…
どうしよう…
(ドクンドクンドクン…ドクンドクンドクン…ドクンドクンドクン…ドクンドクンドクン…)
アタシの乳房(むね)の奥でより激しい鼓動が高鳴った。
アタシは、再びはやとへの想いを強めた。
お風呂掃除のあと、アタシはビショビショに濡れた衣服を着替えるために自分の部屋ヘ戻った。
クローゼットから新しいブラウスとピンク系のマキシ丈スカートとチューブトップとショーツを取り出した。
その後、濡れたブラウスとチューブトップを脱いだ。
この時、アタシはKカップの極爆乳にはやとがつけたキスマークがはっきりと残っていたのを見た。
その瞬間、アタシの顔は悲しい表情に変わった。
「はやと…」
あの時、はやとは…
ゆりかごのベッドの上で…
全裸のアタシを抱いて、無我夢中で甘えていた…
はやとが全裸のアタシに甘えながらキスをしていた。
濃厚なラブシーンを思い出したアタシは、乳房がきゅんとしめつけられて、悲しくなった。
「はやと…はやと…あっ…」
おさえきれなくなったアタシは、ショーツの中に右手を入れた。
「あっ…はやと…」
アタシは、甘いといきをもらしながらあの日のことを思っていた。
それから数分後、ショーツから右手を出したアタシは、ベッドの上に顔をふせて声をあげて泣いた。
「はやと…はやと…好き…愛してる…こんなに愛してるのに…どうして…どうして結ばれないの…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん……けいこ…けいこ…くすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…けいこ…まだ…はやとを愛してる…けいこはまだ…はやとが好きなの!!…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」
夕方頃のことであった。
はやととゆうかさんがパート勤務を終えて帰宅した。
ふたりは、一緒にお風呂に入りますので浴室に行った時。
この時、アタシははやとがひとりで浴室にいると思い込んだ。
はやとの胸に飛び込みたい…
全裸になって…
はやとの胸に飛び込みたい…
アタシは、意を決して浴室に向かった。
白のブラウスとピンク系のマキシ丈のスカート姿のアタシは、ゆっくりと浴室に近づいた。
まだゆうかさんは、お風呂場に来てないわね…
アタシは、白のブラウスのボタンを外して、ひらいた。
ブラウスの間から、白のチューブトップがあらわになった。
(ドクンドクンドクン…ドクンドクンドクン…ドクンドクンドクン…)
アタシの乳房の鼓動はますます高鳴った。
ああ…
はやと…
けいこ…
がまんできない…
アタシは、ドキドキしながらブラウスのボタンを全部外した。
(ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン…)
つづいて、アタシはマキシ丈のスカートのボタンを下から外してそーっとたくしあげた。
素脚が見えた時、アタシの気持ちはバースト寸前におちいった。
はやと…
けいこをうばい取って…
アタシは意を決して、浴室の戸を開けた。
ああ…
はやと…
…と思ったら…
「キャッ…義母さま!!」
浴室に入っていたのは、はやとではなくゆうかさんだった。
ゆうかさんは、Tシャツを脱いだあとピンク色のユニクロワイヤレスブラ(3Dホールド)の後ろのホックを外していた。
ゆうかさんは、Mカップの極爆乳を両手で隠した状態でおどろいた。
「ゆうかさん。」
「義母さま!!のぞかないでください!!」
アタシは、何て答えればよいのかわからずコンワクした。
つづいて、はやとがお風呂場にやって来た。
「かあさん、何しているのだよ…恥ずかしいじゃないか。」
はやとは、困った表情でアタシに言うた後お風呂場に入った。
あ~あ…
空回りしたわ…
はやとにきらわれた…
そうよね…
はやとは、かあさんと別れてゆうかさんの元へ帰ってから…
なにもかも…
変わってしまったのね…
その日の夜であった。
アタシは、ふとんの中でひとり寝をしていた。
眠れないわ…
この最近…
なかなか眠れない…
また、あの濃厚なラブシーンを思い出した。
ゆりかごのベッドの上で全裸のはやととゆうかさんが激しいタンキスをしていた…
あの濃厚なシーンを思い出したアタシは気持ちがモヤモヤとした。
眠れないアタシは、深夜の時間帯にテレビで放映されていた昔の昼ドラの再放送を見たり、スマホのケータイ小説サイトで大人の恋愛小説を読んだりしてモヤモヤを打ち消そうとした…
しかし…
どうしても、あの濃厚なシーンが頭から離れない…
アタシの苦悩は、ますます募るばかりであった。
7月の最終月曜日のことであった。
この日の夕方、アタシは職場の同僚たちと一緒にことでん片原町駅の近くにある居酒屋さんヘ行った。
月末恒例の職場のノミ会が開かれる予定であった。
話は、ノミ会が盛り上がってきた時であった。
アタシはすみっこの席でひとりぼっちで座っている38歳の男性職員のはやてさんに優しく声をかけた。
はやてさんは、みんなの輪に入らずにひとりぼっちでしょんぼりとしていた。
だからアタシは、はやてさんの話し相手になった。
はやてさんはアタシに『局長さんからすすめでお付き合いをしている取引先の会社の造園会社の女性従業員さんがこの最近会ってくれないからさみしい。』と言うた。
アタシは、はやてさんのことが気になっていたので『アタシが…なぐさめてあげる。』と優しく言うた。
その後、アタシとはやてさんは兵庫町の商店街の裏手にあるラブホ街へ歩いて向かった。
ところ変わって、ラブホの一室にて…
アタシは、はやてさんにさみしい声で『抱いて…』と求めた。
はやてさんは、アタシにガバっと抱きついたあとベッドに寝かせた。
その後、アタシが着ていた衣服と下着を脱がして全裸にした。
「はやと…はやと…」
アタシは、はやとの名前を呼んだ。
はやてさんもアタシを抱きながらカノジョの名前を呼んだ。
この日の夜、アタシとはやてさんはラブホで一夜を明かした。
次の日の朝のことであった。
またところ変わって、アタシが働いている郵便局にて…
はやてさんがデスクワークをしていた時に、局長さんが気やすい表情ではやてさんのもとにやって来た。
局長さんは、はやてさんに対して『カノジョとはうまくいっているか?』と気やすい声で言うた。
はやてさんは『うまく行っています。』と気乗りしない返事で答えた。
局長さんは『よかったよかった…挙式披露宴が決まったらバイシャクニンをつとめるから…日取りが決まったら知らせてくれよ。』とはやてさんに言うたあと、くちぶえをふきながら立ち去った。
はやてさんは、ものすごく困った表情を浮かべた。
その日の夜もアタシは、はやてさんと一緒にラブホに行った。
そしてまた、激しく身体を求め合った。
アタシは…
はやとを忘れるために、はやてさんに抱かれていたのに…
ゼンゼン満たされない…
どうしてなの?
それから数日後のことであった。
はやてさんは、その間勤めを休んだ。
アタシは、ものすごく心配になった。
最初のうちは、はやてさんは疲れているから数日後にはまた元気な表情で出勤するだろうと思った。
はやてさんは、アタシに『(婚約者の女性)がこの最近造園会社の社長のどら息子とイチャイチャしている…どら息子にカノジョを取られたからさみしい…』とアタシに言うたのを聞いた。
仕事を終えたアタシは、城東町にある岸壁へ行った。
造園会社の社長のどら息子がよくドライブに来ることをはやてさんから聞いたので、アタシはどら息子が来るのを待った。
はやてさんが言うた通りに、造園会社の社長のどら息子が真っ赤なアルファロメオに乗ってやって来た。
どら息子に近づいたアタシは、車に乗り込んだ。
その後、東かがわ市の国道11号線沿いにあるラブホに行った。
そこでアタシは、どら息子と全裸になって激しく求め合った。
アタシは造園会社の社長のどら息子にも身体を求めるようになった。
そうこうしていくうちに、アタシは底なし沼に引きずられて行った。
時は、9月の第1月曜日のことであった。
はやてさんは、数日どころか8月いっぱい勤めを休んでいたことが明らかになった。
同時に、アタシが造園会社の社長のどら息子とフラチな関係を持っていたことが原因による深刻な事件が発生した。
この時、どら息子はヤクザの組長の妻をレイプしたあと殺した事件を犯したあとあちらこちらを逃げ回っていた。
どら息子は、仲間の男たちにとっつかまった。
その後、仲間の男たちから集団リンチを喰らったあとドラム缶に押し込められた。
そして、コンクリートを流し込まれた。
そんな時に、造園会社の社長の知人の(ヤクザの顧問)弁護士さんがかけつけたので間一髪で助かった。
しかし、造園会社の社長さんは弁護士さんを連れて郵便局に抗議に来たので大ごとになった。
さらにその上に、事件が発生した。
この日の朝方、はやてさんは局長さんに辞表を提出した。
局長さんは『やめないでくれ。』と何度も言うてはやてさんを説得した。
はやてさんは『どんなにがんばってもお給料が上がらない…造園会社の社長のどら息子はカネがたくさんあるから…どら息子にカノジョを取られたからここでは働けない…』と言うてイコジになった。
局長さんは、はやてさんに対して怒った口調で『お給料をあげたくても経費節約などで上げることができないのだよ!!お給料の使い道の節約をするか、貯金をしておカネを作るか…自分で努力をしようとする気持ちが君にはないのかね!?』と言うた。
ブチ切れたはやてさんは、局長さんの胸ぐらをつかんでコブシをふりあげた。
シュラバになっているところへ、造園会社の社長さんから電話がかかって来た。
電話の対応に当たっていた女性職員さんが局長さんに『局長!!造園会社の社長さんがえらいケンマクで怒っています!!すぐに電話に出てください!!』と言うた。
局長さんはすぐに電話に出た。
この時、造園会社の社長さんは知人のヤクザの事務所から電話していた。
局長さんが電話に出た時、受話機ごしにヤクザの男の怒鳴り声が聞こえた。
『オドレかたの職場の女のカレが交通事故で亡くなった…そのせいで5000万の借金を回収できなくなった…女性職員の息子夫婦をうちで預かった!!女性職員を今すぐ連れてこい!!』と言うてガチャーン!!と切った。
アタシは局長さんからどぎつい声で『十川東町のA造園の知人の(ヤクザの)組ヘ行くから一緒についてきなさい!!』と言われた。
どうしよう…
アタシのせいで…
はやととゆうかさんが…
ヤクザの事務所に連れて行かれた…
ところ変わって、高松市十川東町にあるヤクザの事務所に…
アタシが局長さんと一緒に事務所に来た時、事務所のソファにはやととゆうかさんが座っていた。
呼び出された時、はやとは温泉施設の制服姿で、ゆうかさんはマルナカの緑色のエプロン姿で三角ずきんをかけている姿であった。
周囲にいる男たちは、はやととゆうかさんを見張っていた。
造園会社の社長さんのどら息子が交通事故で亡くなった。
社長さんは、はやととゆうかさんに対して『オドレらは絶対に許さないからな!!』と激怒していた。
この時、アタシはひどくコンワクしていた。
それから30分後であった。
局長さんのかつての上司で、高松の中央郵便局の局長さんがセートーハの弁護士さんを連れて事務所にやって来た。
中央郵便局の局長さんは、造園会社の社長さんと組長に対してはやととゆうかさんに危害を与えるなと言うて、解放するようにと要求した。
その後、セートーハの弁護士さんは封じ込め対策などに出た。
このあと、アタシはしょんぼりとした表情ではやととゆうかさんと一緒に家に帰った。
アタシは、今回の一件ではやとから冷たくあしらわれた。
「かあさん!!どうしてくれるのだよ!?ぼくとゆうかはヤクザの事務所に連れて行かれたんだよ!!造園会社の社長さんはうちの温泉施設によく来てくださった…のに…今回の一件でお客様をひとり失った!!どうしてくれるんだよ!?」
「はやと…かあさんを許して…」
「ぼくにあやまってもダメだ!!あやまるべき相手を間違っていることに気がついてよ!!」
「はやとやめて!!お願いだからやめて!!」
ゆうかさんは怒り狂っていたはやとを必死になって止めた。
しかし、はやとはものすごく怒り狂っていた。
アタシはこの時、無気力状態におちいった。
(はやと)
そして、次の朝のことであった。
ぼくとゆうかがダイニングに行った時、テーブルの上に置き手紙が置かれていたのを見た。
ぼくは、手紙を手にとって読んでみた。
かあさんは…
置き手紙を残して…
家出してしまった。
ゆうべ、ぼくはかあさんにどぎつい言葉を言うた…
かあさんは、それを苦に家出した…
かあさん…
どうして…
置き手紙にはぼくとゆうかに『かあさんに代わって、今すぐに郵便局に行ってほしい…』と書かれていた…
かあさんは、郵便局をやめてどこか知らない街へ行こうと決意した…
そして、ぼくたちにだまって家を出ていった…
ぼくとゆうかは、かあさんの置き手紙に書かれていた通りに郵便局に行った。
そして、かあさんの退職の手続きを取った。
かあさんが残した仕事は、局長さんがすべて引き継いだ。
ぼくとゆうかは、かあさんが使っていた小物を引き取ったあと家に帰った。
かあさんは、職場と周囲のみなさまに顔向けができなくなった。
ぼくとゆうかも、仏生山で暮らして行くことに限界を感じたので、よそへ引っ越そうと考えた。
ゆうかは、よそへ引っ越しをすることに異議はなかった。
でも、その前にかあさんを探しに行こうとぼくに言うた。
ぼくとゆうかは、かあさんを探しに旅に出た。
午後1時頃のことであった。
ぼくとゆうかは、高松市内をくまなく歩いて、かあさんが行きそうなところを探した。
約2時間かけて探したのに、かあさんは見つからなかった。
夕方4時10分頃のことであった。
ぼくとゆうかは。JR高松駅のエントランスのホールにあるにベンチに座っていた。
どこを探しても、かあさんは見つからなかった…
どこへ行ったのだろうか?
ゆうかもまた、かあさんがどこへ行ってしまったのかと心配になった。
そんな時であった。
ぼくは、3歳の時のことを思い出した。
家族で最初に行った海水浴…
弟が昼寝をしていた一時間の間だけかあさんを一人占めした幸せな時間…
Kカップの極爆乳を包んでいた赤色のビキニ姿のかあさんに…
ぼくは、無邪気な表情でかけよって…
『きれいなかいがらをひろってくびかざりにしたよ…』と言うて、くびかざりをかけた…
あの時のシーンがよみがえった。
「かあさーん…かあさーん…」
「はやと。」
「かあさん、みてみて…これ…きれいなかいがらをひろったのだよ…それで、くびかざりを作ったよ。」
「うれしいわ…ありがとう…」
くびかざりをかあさんの首にかけた時、かあさんは喜んだ。
ぼくは…
かあさんの右のほほに、優しくキスをした。
あの時…
わずかな時間だったが…
幸せだった…
「あ・り・あ・け・は・ま…」
ぼくはこの時、家族で最初に海水浴に行った観音寺にある有明浜を思い出した。
「有明浜。」
「ゆうか…観音寺へ行こう…かあさんは…有明浜の海水浴場にいるかもしれない…かあさんに会いたい…かあさんに会いたい…」
ぼくは、震える声で泣いた。
ゆうかは、泣いているぼくに優しく言うた。
「アタシも…義母さまのことが心配なの…」
ぼくとゆうかは、このあと松山行きの下り特急列車に乗って観音寺へ向かった。
ところ変わって、有明浜の海水浴場にて…
かあさんは、ぼくが思った通りに有明浜にいた。
赤茶色のバッグを持って家を飛び出したかあさんは、夕暮れの海をひとりぼっちでながめていた。
この先どうしようか…
ぼくとゆうかに会いづらくなったかあさんは、今どんな思いでいるのか…
そんなことばかりを思っていた。
夕方5時40分頃のことであった。
東の空が少し暗くなりはじめたと同時に、小さな星が輝いていた。
この時、ぼくとゆうかはかあさんに会うことができた。
「かあさーん。」
「義母さま。」
ぼくとゆうかの声に反応したかあさんは、後ろを振り向いた。
「はやと…ゆうかさん。」
「かあさん、ぼくとゆうかは…かあさんを探してここまで来たのだよ。」
「義母さま、一緒に家に帰りましょう。」
しかし、かあさんは泣きそうな表情でうつむきながら言うた。
「かあさん…これから遠くへ行くから…」
「そんな。」
「はやと…ゆうかさんと幸せに暮らすのよ…さよなら…」
かあさんは、泣きながらぼくとゆうかに背を向けて旅に出ようした。
しかし…
かあさんは、7歩歩いたところで足が止まった。
この後、その場にしゃがみこんで声をあげて泣いた。
ゆうかは、かあさんに優しく声をかけた。
「義母さま…はやとは…ずっと義母さまのことが大好きなのよ…大好きだから…ここまで探しに来たのよ…アタシも…義母さまのことが大好きだから…義母さま。」
「ゆうかさん…ゆうかさん…」
「ゆうか。」
ぼくとゆうかは、かあさんに手をさしのべた。
「かあさん…ぼくは…ゆうかとかあさんが両方大好きだよ…ぼくの家族は…ゆうかとかあさんしかいないんだよ…一緒に帰ろう…」
「はやと…」
アタシは、はやととゆうかさんと一緒に家に帰ることにした。
アタシはまだ、はやとへの想いが残っていた。
はやとは、アタシとゆうかさんの両方とも大好きだとアタシに伝えた。
ゆうかさんも、アタシのことが好きよと伝えた。
ありがとう…
はやと…
ゆうかさん…
かあさんのことを愛してくれて…
ありがとう…
【おしまい】
最初のコメントを投稿しよう!