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2.謎の娘
「それじゃ、行ってきます。」
「あ、はい。行って…らっしゃい。」
私の家から若い娘が出ていく。
それを私は見送っている。
よし、そろそろ私も出掛ける用意をしなければ。
と、まあこんな生活が10日間ほど過ぎようとしている。
一人住まいの私の部屋に高校生の娘が住み始めた。
一体どうしてこんなことになったのか。
きっかけはあの女に手渡された手紙だった。
実はすぐに中を見る気にはなれなかった。
あまりにも得体が知れなすぎる。
血文字でも書かれていたらどうしようとか、昔あったような不幸の手紙だったらなど、色々考えていたが、いや待て、これこそ私の待ち望んでいた新たな展開じゃないか!
と、受け入れる気持ちが勝り、手紙を読むことにした。
手紙の冒頭には、
「預かっていただきたい子どもがいます。」
とある。
冒頭からして唐突、とても意味不明だ。
だが、面白い…!
「事情があって、少しの間で良いので娘を預かってもらいたいのです。高校生の娘です。生活費は必ずあとでお返しします。」
あとは娘も納得していることや、学校の名前などが書かれていた。
さて、どうしたものか。
一週間したら女は返事を聞きに来ると言っていた。
それまでには考えないといけないなと思いながら、もう私の気持ちは決まっていた。
こんなに面白い出来事を断る理由がどこにあろうか。
そして一週間後、女は駅に現れた。
私はその姿を見つけると、女の元へ歩み寄った。そして、
「いいですよ、手紙の件、お引き受けします。」
と、伝えた。
女は安心したような、泣き笑いのような不思議な表情を浮かべたが、何度も頭を下げて私にお礼を言い、近日中に娘を向かわせると言うと、私の前から姿を消した。
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