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昼休み。
同僚の煩わしい世間話や噂話を避けるため、オフィスを抜け出し一人近くの公園へ。
暦では、もう冬。
外の寒さは厳しい。
いつもなんてことない風も、今の私にとっては、身も心にも突き刺さるように痛く感じる。
こんな寒さでは、公園に誰も居るはずはない。
だから、一人でゆっくり過ごせる。
枯れ落ちた木の葉が、冷たい風に流されて、地面を這いずり回る。
そんな様子が、まるで私みたいで、思わず鼻で笑ってしまう。
冷蔵庫のように冷たいベンチに腰掛けると、学生時代から読み続けている恋愛小説を取り出す。
もう何回も読み直した本。
登場人物も、内容も、結末も、全て分かっている。
教科書以上に使い込んだページは、隠された財宝の地図のようにセピア色に変色し、隅が千切れて欠けている。
でも、いくら読み返してもこの小説には、財宝の在りかも、私の幸せも、この先の未来も、なにも載ってはいなかった。
「長い方が好きだ」と言われて伸ばし続けた髪が、風に流されページを覆い、邪魔で仕方がない。
うっとおしい。
自分の体の一部なはずなのに、あいつみたいに、私の前に現れてはウロチョロ視界を遮るので、だんだんと腹が立ってきてしょうがない。
次の休みにでも、切りにでも行こう。
バッサリと、付き合う前の昔みたいに。
そう……
彼と出会った3年前の時代のように。
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