十四日目

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十四日目

 胸が苦しくて、息が詰まって、俺は足を止める。両膝を掴むように前屈みの姿勢で肩で浅い息を繰り返した。  とうに無得なくなった同級生たちの背中。それでも、近くに、まだ見える範囲に誰かいるのではないかと首を回す。額から滴る汗をひとつ拭った。  押し寄せてくる虚しさと、悔しさ。次いで、諦め。観念して、諦めてしまうと、すっと心が晴れるのがわかる。  道の脇に座り込んで、傍らを流れる小川のせせらぎに耳を澄ました。  火照る頬に風を感じて、ゆっくりと大きく息を吸い込むと心が落ち着いていくのを感じる。一気に噴き出した汗が流れ出すが、構わない。  頭上で爛々と輝く太陽は変わらず眩しいけれど。 「あっ! 駆、居たー!!」  大きな声で名前を呼ばれて、緩慢な動作で振り返る。自分の背に迫ってきた影が、太陽を隠した。「大丈夫か?」と伸ばされた手を、頷いて取る。 「置いてってごめん」  困ったように笑ったじゃ胃が、さっきの背中と重なって太陽よりも眩しかった。 「ううん」  首を振る。 「いこ! 向こうでみんながでっかいザリガニ捕まえてるんだ。走れる?」 「うん」  腕を引かれたまま、もういちど走り出す。  不意に昔のことを思い出しながら、あの頃よりも成長した背中を見つめていた。 「駆?」  急にペースを落とした俺を、友人は振り返る。 「いや……――急にちょっと、懐かしくなってた。歩武は先、行けば?」 「いいよ。学校周りを走り込みとか、真面目にやると延々走らされるだけだって」  確かに。と苦笑を零して、汗ひとつ拭わない友人を見る。  悠々とした姿は、まだまだ余力を感じさせている。 「けど。お前がここにいると俺がサボりを疑われる。先生見てるぞ、さっさと行け」
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