六日目

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六日目

 真っ白い大きな雲が、ゆったりとした速度で視界をスライドしていく。  俺はぼんやりと、心地の良い疲労感の中でそれを眺めている。  どこかで鳴いている蝉と、時々木の枝を揺らす鳥の声。風が流れると、さわさわと木の葉も音を立てた。  心地が良すぎて、このまま眠ってしまいそうだなと、時折顔を出す日差しの暖かさに和んでいた。  蝉と鳥の奏でるそれを聞きながら、いつか学校で聞いたあの音を思い出そうとしていた。 「何ぼーっとしてんだお前は」  突然腕を掴まれ、流れに逆らって身体が上下に引っ張られる。  川底の砂利に足をつけようとして、思っていたよりも深くて驚く。 「長されてんじゃねーよ」  濡れた髪を掻き上げ、顔を腕で拭いながら幼馴染みが言う。  俺の立とうとした場所よりも少し浅いらしい位置にいる幼馴染みに、引っ張り上げられる形で、同じ場所に足を置いて立つ。  改めて辺りを見ると、荷物を置いた川岸からずいぶんと離れていたことに気がつく。  幼馴染みは顔を拭いながら言う。 「プールじゃないんだからな」 「わかってるけど、つい気持ちよくってさ」  わかるだろー? と川岸の方へ、足が浸かる程度の浅い場所を歩いて戻りながら問いかける。 「まあな」  小さな同意に、口角が上がる。 「で、どうする? もう上がるか」  幼馴染みは言って、荷物の方を指差す。  なんとなしに戻るつもりになっていたが、そう問われると……と、俺は踵を返すようにもう一度、深いところに足を踏み入れて身体を浸す。  重たく感じた身体が、軽くなるのを感じる。 「もうひと泳ぎ! で、終わったらアイスだ」 「の、前に宿題だな」 「俺は先に食うからなー!」  泳いだ後のアイスは譲れない。鉄則だ。 「競争で決めるぞ。向こうまで行って戻ってきた方が決める」  言うが早いか、ドボンという音と共に水飛沫が飛んでくる。  ずるい、と叫ぶ間もなく、慌てて沈んでいく背中を追いかけた。  
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