星の裏側から永遠の友情を。

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 ファロディはあっさり島に溶け込んで、賢者の記録を見ながら悠々自適に過ごしていた。塔の屋上は綺麗にしただけで何も物を置かなかった。それでも毎日屋上に上り、西の海を見つめるのが日課だ。  ある日のこと、ファロディの傍らに長く立派な杖が現れた。こげ茶と白木が絡み合った背よりも長い杖。ビー玉サイズの石が7つ、窪みに在る。赤、青、黄、緑、黒、白、透明。ずっと共にある大魔術師の相棒。ファロディの望みをいつだって理解している。  「ああ、もちろん。させないさ」  杖をしっかりと掴んだファロディは勝気な笑みを浮かべて掲げる。天を貫かんばかりの柱が7つ立ち上がり、海を走る。最強の大魔術師の攻撃だ。遠見の力で対象が無力化されたことを確認して満足気に頷く。王に、友人達に手出しはさせない。そう、それが離れた理由だった。  悪王を討って、新たな王にサイフィアが選ばれて、継承の間に入った。王となる者が名乗り、誓いの言葉を口にすることで王にのみ新たなスキルが宿るという神聖な場所。  サイフィアに宿ったのは無効化の力。強大な力を国内では使えなくするというもの。かつて魔術師に滅ぼされかけた歴史も関係していたのだと思う。意識せずとも展開されることに気付いたのはファロディだけだ。理由を話せば折角のスキルを手放そうとしかねないお人好しだ。ファロディは最強の大魔術師。国内では一切の能力が使えない。それでは守れない。だから、国を出た。平和な世界を取り戻す戦いは終わったら、次は維持する戦いになる。悪王を倒して終わりではない。広い意味では生きている限り戦いは続く。  ファロディは放出した魔力の余波で乱れる髪を押さえて目を細めた。  「おれは最強の大魔術師だからな」  星の半分まで届く力。無効化の境目に近付く武力寄りの勢力を叩く。万が一サイフィアが暴君化したらその悪政が国を越えないように力を振るう。この星の裏側から。いつか再会が叶うとしたら世界が全て平和になった時だろう。途方もない。だけど、あいつならやってのける気もする。大魔術師は長生きだ。幻想めいた未来に思いを馳せて遥か遠い友を思う。
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