染まる

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「ついでだからビールも買って帰ろう」  最近になって気が付いたことがある、職場から真っすぐ帰宅すると、コンビニの一軒もないのだ、しかし、本屋に立ち寄ってから帰宅するとコンビニどころかスーパーも二店舗立ち寄ることが出来る。  二十四時間営業の大きめのスーパーと夜十時になると閉店する小さめのスーパー、迷わず小さめのスーパーに向かう、成人した娘が小さかった頃に妻がパートに出ていたので何となく愛着がある、それに…。 「あら、みっちゃんの旦那さん」 「こんばんは佐々木さん」  妻が働いていたのは何年も前なのに、長く勤めているおばさん達はこっちの顔をよく覚えている。 「ビールのオツマミだったら良いのがありますよ」  買い物カゴの中身を見た佐々木さんは半額シールの貼られた惣菜をポンと入れていく、お節介というか何というか…。 「そういえばお孫さんはまだなんですか?」 「いや、まだ彼氏を連れてきただけなので」  パートのおばさんは何処でそんな情報を仕入れるのだろう、これ以上プライベートな話をされてもかなわん、スーパーで長話に付き合うほど暇なおじさんではないのだ。      
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