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「分かりました。引き受けましょう。完璧な次期社長を採用してみせますよ。そうすると必然的に、常務は私の部下的存在になりますが、そこはよろしいのですよね?」
目力を込めて言うと、彼は子どもみたいに笑った。
「おれと祝井さんの仲じゃない。何にも遠慮はいらないよ。そう、おれたちは遠慮のない仲でしょ。きみはいつだって話を聞いてくれた。だからこの領収書だって、もちろん経費で落としてくれると信じてる」
常務がまた一枚の紙を手渡してきた。
そこには、およそ四万円の数字と、『ビュッフェ椿』の名前が書かれていた──。
私は悩む。悩みに悩んだ。
しかし、次期社長を選ぶ大役と、その後のワンダフルな時代の到来を考えれば、今回これを受け取る以外の選択肢はないように思えた。
「……はい。後ほど処理しておきます」
急いては事を仕損じる。
愚かな男どもに厳しくするのは、採用面接を終えてからだ。
(了)
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