最初で最後の染め物

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最初で最後の染め物

 私の時代、中学校の図工で蝋結染めがありました。  ご存じの方も多いかと思います。または、やはり授業でやった方もいるかもしれません。  字のごとく、蝋で、染めたくない部分に絵柄を書きます。そして、そのほかの部分を染料で染めるのです。結構大きな布で小さめの風呂敷位あったでしょうか。  私のいた中学校では3色に染めたので結構時間がかかりました。絵柄もそれなりに考えないと3色入らないのです。  色は、藍色、薄い赤、黄色、の3色でした。    私はその頃凝っていたお魚が泡を出す絵柄にしました。  少しずつ場所をずらして、左右均等に、お魚が三角を描くように書きました。  主に藍色で染め、深い海にお魚がいる印象です。  初日はそれで終わり、乾いたら次の図工の時間に別の色を入れます。    私は泡を書いた蝋に少しひびを入れ、そこに綺麗な薄い赤色を入れました。  次の時間には別の泡に少しひびを入れ、黄色を入れました。  藍色が思ったよりも薄く染まったため、深海ではなく淡水魚になりましたが、図工の苦手な私にしては出来が良く、先生にも褒められました。  私は風景画は水彩絵の具だと何とかかけるのですが、粘土細工、クレパス画、針金の作品、粘土を使っての窯焼きなど、どれも今一つで、頑張っても5段階の3しか取れないのです。  クラス全員が、失敗したときの為にもう一枚下絵を描いていました。  そちらの絵柄もその頃に凝っていた葉っぱにしました。  葉脈の部分には蝋を乗せず細かく描き分けていきました。  先生に、 「こっちはどうしても一色で染めたい。」と、申し出て、お魚の方を提出することにして、葉っぱの図柄は黄色だけで染めました。  葉っぱはイチョウではなかったのですが、葉脈まで綺麗に黄色に染まり、これも満足のいく出来になりました。  蠟を落とした後の作品は自宅に持って帰ると、お魚の方は部屋の壁に飾り、黄色い葉っぱの方は、母が何かちょっと包むのに勝手に使っていました。  まぁ、喜んで使ってくれているのなら良いと思い、何も言いませんでしたけれど。  人生で最初で最後の染め物でした。この授業は楽しくできて良かったと、今になっても思います。  学生時代を卓球一色で終わらせられた私には学校にあまりいい思い出はありません。  でも、学校の授業もこんな思い出になるんだなぁと、今、書いていてちょっと嬉しくなりました。 【了】
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