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男は優しい笑顔でそう言った。
「じゃあ、お言葉に甘えます。本当にありがとう。あなたはとても頼りになる占い師だわ」
「光栄です」
今夜、雄太が仕事から帰ってきたら、伝えよう。自由に飲み屋に行っていいわよ……と。
そんな決意を胸に友恵は自宅へ向かって歩き出した。
占い師の男は友恵の姿が視界から消えると、右手をあげて合図した。
合図を受けてひょっこり姿を現したのは、雄太だった。
男は雄太に向かって言った。
「先輩、うまくいきましたよ」
「サンキュー。感謝するぜ」
「これで大手を振って、飲みに行けますね」
「ああ。お前みたいな占い師の後輩がいて助かったよ」
雄太はにこやかに男の肩を叩いた。
「先輩は交友関係が広いですからね。じゃあ約束通り、ファミレスで飯おごってもらいますよ」
「ああ、わかってる。やっと飲み屋解禁か。長かったなあ、この二週間」
男は店の後片付けを始めた。
雄太はその姿を見つめながら、小さくつぶやいた。
「友恵のやつ、なにか困りごとがあると必ず占いに頼るからな。結婚前からのそんな癖があって助かった。それにしても、こいつは本当に頼りになる後輩だぜ……」
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