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その占い師は駅前にあるデパートの建物前の広場に店を構えていた。
青いクロスを敷いた小さなテーブルと椅子が二脚あり、テーブルの上にはタロットカードや水晶玉が置いてある。「人生で迷っていること、なんでも占います」と書かれた紫色の旗も立っていた。
そのテーブルの向こう側に水色のシャツを着た一人の若い男が座っている。
友恵は遠くから占い師の男をこっそり観察していた。
あの人、信用できる人かしら……?
困ったときには占いに頼る。それは友恵が結婚する前からの行動パターンの一つだった。
今日は、どうしても相談してみたいことがあった。それは夫の雄太に関することである。
雄太は大の酒好きで、仕事を終えると毎晩のように酔っぱらって帰ってきていた。
ところが今から二週間ほど前、酒のにおいをプンプンさせながら帰宅した雄太と、その酒のことがきっかけでちょっとした口論をしてしまったのだ。
雄太の稼ぎはそれほど少ないというわけではないが、家計はあまり楽だとはいえない。
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