1048人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
私がそう言うと、目の前の彼は……。
「……嬉しかったよ」
「え……?」
彼はショックどころか、嬉しかったと答えた。
嬉しかった……? どういうこと?
「嬉しかった。……俺にも家族がいたことを知って、嬉しかった」
「……私の家族は、あの子だけです」
「え……?」
私は彼を突き放すかのように「あなたは私にとって、家族なんかじゃない。……たった一度身体を重ねただけの仲です」と言い放った。
「あなた……もしかして果琳に父親だって名乗るつもりですか?」
「……いや、それは」
「今更父親だなんて、名乗られても困ります」
父親が居ない中で、二人で生きてきたのに。今更父親だなんて、名乗られたくない。
「私は果琳と二人で生きていきます。……これからもずっと、二人で」
そう伝えると彼は「少しだけでいい。果琳と話をさせてくれないか?」と聞いてくる。
「頼む。 果琳には、父親だということは名乗らないと約束する」
「……イヤです。帰ってください」
今更果琳に会わせられる訳がない。父親だと名乗らなくても、会わせたくなんてない。
「……頼む。少しでいいんだ」
そんな顔で見つめられると、断れない……。
最初のコメントを投稿しよう!