2.シングルマザー

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 私がそう言うと、目の前の彼は……。 「……嬉しかったよ」 「え……?」  彼はショックどころか、嬉しかったと答えた。  嬉しかった……? どういうこと? 「嬉しかった。……俺にも家族がいたことを知って、嬉しかった」 「……私の家族は、あの子だけです」 「え……?」  私は彼を突き放すかのように「あなたは私にとって、家族なんかじゃない。……たった一度身体を重ねただけの仲です」と言い放った。 「あなた……もしかして果琳に父親だって名乗るつもりですか?」 「……いや、それは」 「今更父親だなんて、名乗られても困ります」  父親が居ない中で、二人で生きてきたのに。今更父親だなんて、名乗られたくない。 「私は果琳と二人で生きていきます。……これからもずっと、二人で」  そう伝えると彼は「少しだけでいい。果琳と話をさせてくれないか?」と聞いてくる。 「頼む。 果琳には、父親だということは名乗らないと約束する」 「……イヤです。帰ってください」  今更果琳に会わせられる訳がない。父親だと名乗らなくても、会わせたくなんてない。 「……頼む。少しでいいんだ」  そんな顔で見つめられると、断れない……。
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