2.シングルマザー

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「……じゃあ、五分だけですよ」 「五分でも構わない。 ありがとう」     彼は私を頭を下げると、果琳の元へと少しずつ歩み寄っていく。  私はベンチから、その様子を見ていた。 「今更……なんなの」    今更私の前に現れて、あの人は何がしたいのか分からない。  何のために、ここに来たのか。何が目的?  果琳と目線を合わせ、話をする彼の姿を見ている私は、ただそこにいることしか出来ない。  何の話をしているのかも分からないけど、果琳はあの人に向かって微笑みを向けている。  果琳が楽しそうに笑っている。あの人は一体、果琳に何を言っているのだろう。  父親だとは名乗らないと言っていたけど、本当にそうなのだろうか。 彼を信じても、いいのだろうか……。  そして五分ほど経って、彼は私の元に戻ってきた。 「子供、良い子だな。お利口さんだ、果琳は」 「……ありがとうございます」  確かに果琳は、彼との子供に間違いない。 「子供……可愛いな」 「……どうも」  果琳はもし彼が父親だと知ったら、どういう反応をするのだろう。喜ぶのかな。   「安心しろ。父親だとは名乗っていない」 「……分かってます」  果琳の家族は、私だけ。
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