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その日は彼に、激しく熱情的に抱かれたことを今でも覚えている。
あの日の夜は、本当に素敵な夜だった。 たった一回の過ちだったけど、そんなのを忘れさせてくれるのかのような、濃密で甘い時間だった。
「でも君はなかなか見つからなかった。名前も知らないし、住んでる場所も知らなかった。だから君を見つけるのに、こんなに時間がかかってしまったよ」
「……あなた、変な人ですね」
一夜を共にしただけの女にまた会いたいとか、変な人だ。 たった一回セックスしただけの女に、情が湧くなんて……。
この人はおかしいと思う。
「俺もそう思うよ。君とこんなに会いたいなんて……本当に変だと思う」
「じゃあなんで……?」
どうして私を探そうとなんてしたの?
「……君の涙が忘れられなかったんだ」
「涙……?」
「君が俺の腕の中で、あの日流した涙が……なぜだか忘れられなかったんだ」
私の……涙? 私、あの日泣いてた……?
それすら、全然覚えていない。
「その時から君が、頭から離れられなくなったんだ」
「……じゃあなんで、あなたはあの日先にホテルを出たんですか?」
起きたらもう、彼はベッドにいなかった。そんなの、信じられない。
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