3.家族になるための時間

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 可愛いくて愛くるしい果琳をこの手で抱いた時、愛おしさが溢れたんだ。  これからは私が、果琳を守っていこうって、そう決めたんだから。 「由紀乃……」 「言っておきますが、あなたのことなんて、私は一ミリも恨んでませんから」  片倉さんは私を見つめながら、瞬きをしている。 「むしろ……感謝してます」 「感謝……?」 「あなたが残してくれた果琳という素敵な宝物が、私のかけがえのないものになったから」  果琳だけは絶対に守りたい。果琳にだけは……絶対に幸せになってほしい。 「あなたに出会えなければ、私は果琳には出会えなかった。……あなたと出会えたから、果琳を授かることが出来た。本当に、感謝してます」 「っ……由紀乃……」  片倉さんの目が……少し潤んでいた。 「え……片倉さん?」  そして片倉さんは、私をそっと抱き寄せる。 「由紀乃……ありがとう。果琳を産んでくれて、ありがとう。 可愛い娘に出会わせてくれて、ありがとう」  まさか、ありがとうと言われるなんて……。思ってもなかった。 「俺はやっぱり、君と生きていきたい。ずっと、君たちのそばにいたい」
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