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クラスメート
「なあ!普通科一年の北村凪子ってお前の妹ってホントか?」
教室に入ってくるなりそう言って騒々しく聞いてくるのは我が3年特進クラスA組一の陽キャ、小林彼方(かなた)だ。
基本勉強第一の特進クラスに何でこんな騒がしいやつが紛れ込んでいるのかは、わが校の七不思議の1つだ。なぜか成績上位にいることがそのまた七不思議の1つだしね。
「なあ!マナ!あの超絶美少女、ほんとにお前の妹?」
私、北村真愛(まな)は煩いという態度も隠さず
「超絶美少女かどうかは別として北村凪子は戸籍上私の妹なことは間違いない。」
話は終わったとばかりに私は手元の参考書に目を向けた。
彼方は一人で普通科の天使だとかなんとか喋り続けている。
高校3年の6月。特進科のみんなはとっくに受験モードに入っているのにコイツは何でこんなにお気楽なんだろう。しかもそんなやつにこの間の模試で負けた私。
軽く殺意をもつ。
「なあなあ、マナちゃん」
「え?キモいんだけど。何、急にちゃん付け。」
「凪ちゃんがさぁ」
「おい、話したこともない妹もちゃん付けかよ」
呆れるやつだ。
「固いこと言うなよ〜、俺とマナちゃんの仲じゃん。」
「過去、現在、未来において私と貴方の仲に、知り合いという以外の何らかの関係があるとは思えないんだけど。」
「酷っ!3年間同じクラスの仲間じゃない!」
と、いうか、我が特進科は純粋に成績順でクラスが分かれる。A組は上位30番までが入る。すなわち入学してから30番より落ちなければずっと同じクラスだ。
くどいようだが、こいつが3年間常に上位30番に入っていることは全く持って謎だ。
「ま、とにかくさ、あの凪ちゃん、サッカー部のエースにも、バスケ部のキャプテンにも靡かなかったってよ。すげーな、我が高のイケメンに見向きもしないって。もしかして筋肉より頭のいい男がタイプとか?たとえば、俺?俺なんかどう?」
あー、もう!うるさい!叫ぼうとした私より一瞬早く、低い響く声が遮った。
「小林、うるさい。」
見上げれば、いつの間にか隣の席の大木氏が立っていて、勝手に席に座っている小林を無造作に引っ張りあげた。
「自分の席に着け。もうすぐ始業時間だぞ」
「へいへい。相変わらず大木さんはクールでらっしゃるのねー。」
「お前が騒がしいだけ。」
ブツブツ言う彼方を気にする風もなく、大木は授業の準備を始めた。
私も大学の参考書をカバンに入れる。
「北村」大木が不意に声をかけてきた。
「ん?何?」
「付属大には進まないのか?」
参考書の大学名を見たのだろう。
確かに私はつい先日まで付属している大学に学内推薦で進もうと考えていた。
「うん。県外の大学に志望校変えたの、最近。大木もだよね?」
「まあ。そうだな。俺はもともとそのつもりだったから。」
大木氏は10番台から20位くらいをうろちょろする私と違って、入学以来いつもトップだ。
185センチの長身、無造作な、でも整った髪型。学力だけでなく顔面偏差値も高い男だ。
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