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並んだ名前
遅い時間ではあったが、お腹はペコペコだ。
母がおかずを温め直し、ご飯と味噌汁をついでくれる。
なぜか食卓に食事は済んでいたであろう家族が、座る。
母が父と自分にお茶を淹れ、凪子はココアを作って座る。
なんだこれ?気まずい中、黙々と箸を動かす私。
「お姉ちゃん、大木先輩と付き合ってんの?」
味噌汁を吹き出しそうになった。
「違っ!ただ勉強教えてもらってただけ。」
「ズルイ!私が大木先輩のこと好きなの知ってるよね?」
凪子はふくれっ面で文句を言う。
「…初耳だけど。そもそも多聞くんと凪子、接点あった?この間ジャージ借りに来たときぶつかっただけだよね?」
「…ふーん、名前で呼んでるんだ、大木先輩のこと。大木先輩もお姉ちゃんの名前呼び捨てだったよね?」
「…………」
「まあ、いいけど!人の彼氏に興味ないし!」
両親が凪子の言葉でぴくり、と反応したことにも凪子だけは気付かない。
あー、気不味い。
「さて、私はパックして寝よーっと。おやすみ~」
凪子はココアを飲み干すと席をさっさと立っていった。
「凪子!あなたも明日テストでしょう?大丈夫なの?」
母が呆れたように声を掛ける。
「平気、平気!それなりにやってるから〜!」
トントンと階段を昇る音がした。
「ご馳走様でした」
通常の2倍くらいのスピードで食べ終わり食器を洗おうとシンクに持っていこうとしたら
「私がやるからおいといて」と母が声をかけた。
「あ、はーい。ありがとう。」
そのまま、二階の自分の部屋にいこうとしたら父が、声を掛けてきた。
「真愛、ちょっと座りなさい。」
なんだか久しぶりに父親から声を掛けられた。私は黙って父の前に座る。
「なあに?」
「…大学、決めたのか?」
「うん、A大の国文科。合格したらあっちに住む。」
「…わかった。A大は難関だからちゃんと滑り止めも受けておきなさい。それからA大は英文学科も有名だ。真愛は英語、得意だろう?そっちも考えてみたらどうだ?」
「…、うん、考えてみる。でも、いいの?付属大にも英米文学科あるのに。」
「…住むところはちゃんとしたセキュリティのところを探しなさい。家賃が少し高くてもなんとかするから。なんならお父さんが探しておこうか?」
「い、いや!大丈夫。」
「そうか。まぁ、頑張れ。」
「…うん。」
「真愛、…いろいろ苦しませたな。受験が終わったらちゃんと話をするから。本当にごめん。つらい思いをさせた。お前にも、『あの人』にも。」
何を今更、って気がしないこともなかったが、今日の私はもういっぱいいっぱいだった。
ただ無言で階段を登った。
ぐちゃぐちゃな気分で目覚め、テストを迎えた。
一週間後、廊下に張り出された順位表。
安定の定位置の首位には大木多聞が。そして、隣には。
入学以来、最高位、二位の位置に北村真愛の名前があった。
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