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そんな感じで休み無しに次々と仕事をこなし、俺が再び紗織の家を訪れたのはあれから2週間も経った頃だった。
街は年末に向けてクリスマス・イルミネーションが華やかだ。
ふと、里穂と省吾の事を考える。
あの子らは父親からちゃんとプレゼントを貰えるのだろうか。
「しんじおじちゃん!!」
玄関先で俺を見つけた省吾が俺に飛び付いてくる、思わずそれを抱き上げた。
「真ちゃん、いらっしゃい」
前に会った時よりも幾分顔色が良くなった紗織が笑顔で出迎えてくれた。
上がり込み、仏壇に線香を上げる。
コタツに移動すると、又省吾が膝に乗ってきた。今日はまだ里穂は学校だろうか。
省吾が俺を見上げて笑っていた。俺はそんな省吾がすごく可愛いくて、後ろからギュッと抱きしめる。
「真ちゃん…ありがとうね、この前、里穂がお金…」
俺の前に座った紗織が頭を下げた。
「頭なんて下げんな、省吾が見てる」
母親の様子を不思議そうに見てる省吾を気遣う。
「あ、ごめんね」
紗織は立ち上がって台所に戻って行った。
「省吾、ちょっと待っててな」
俺は省吾を膝から下ろし、紗織を追う。
「紗織」
台所の流し台の所で、紗織が振り返る。
紗織は泣いていた。その涙に胸が締め付けられる。
「紗織、俺に嘘は言うなよ。御堂は家に帰って来ないんだろ」
俺の言葉に紗織がためらいがちに頷いた。
あの野郎、やっぱりかよ。
御堂…!!ぶっ飛ばしてやろうか!!
「家に金も入れないで何やってんだあの野郎!!会社に押し掛けて行って締め上げてやる!!」
「真ちゃん、止めて!!」
紗織が涙の顔を上げる。
「あんな人でも里穂と省吾の父親だもん…止めて…!」
「紗織」
そんな無責任な男でも、紗織はまだ御堂を愛しているのだろうか。
俺には理解出来ない。
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