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「…わかったよ」
俺はポケットから二つ折りにした万札を取り出した。むき出しでなんだけど…5万はある筈だ。
「紗織、これ」
うつむいている紗織の右手を取り、その金を握らせる。
「真ちゃん、いいよ!この前のお金もまだあるし…!!」
「いいから」
「いつ返せるかわからないし…」
「あ?誰が貸すと言ったよ。俺はお前にやったんだ。兄貴が妹に小遣いやって何が悪いよ?」
ギュッとその手を閉じさせる。
「真ちゃん」
「クリスマスだろ、チビ達に何か買ってやってくれ」
俺は居間に戻った。コタツに座り、待っていた省吾を膝に抱く。
嬉しそうに俺にもたれかかる省吾。その甘えん坊ぶりが嬉しい。
――俺はやっぱり、兄貴でいいんだ。
紗織の為に、兄貴のままでいいんだ。
俺は自分に強く言い聞かせた。
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