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「真ちゃん!」
「よぅ」
玄関先で俺を出迎えてくれた紗織は、すっかり痩せてしまっていてその美しかった面差しが変わりつつあった。
けど、それでも俺を笑顔で迎えてくれた。
「昭夫くんが言ってくれたのね、良かった」
仏壇のある居間に通ると、里穂と省吾の姉弟が仲良く遊んでいた。
突然の来訪者に目を丸くしていたが、年長の里穂が俺に気づく。
「しんじおじちゃん!」
「よぅ里穂、元気だったか?」
手を伸ばし頭を撫でた。里穂が笑顔で頷く。
省吾はと言うと、やはり最後に会ったのが4才前なので俺に覚えがないらしい。不思議そうに俺を見ているだけだった。
「省吾」
名前を呼ぶと余計にびっくりした顔、里穂よりも省吾の方が紗織によく似ているな。
「覚えてないよな、お母さんの兄ちゃんだよ」
そう言って省吾の頭にも手を置く。省吾がようやく笑ってくれた。
その時、玄関の呼び鈴が鳴った。対応に出ていく紗織。
控え目な声で話す話の内容は、何かの集金のような内容で。
「すいません。今、持ち合わせが無くて。来週にはなんとか」
そんな言葉が聞こえていた。
俺は戻ってきた紗織に旦那の帰りを聞いてみた。
出張中で暫く帰らないという。俺は紗織の疲れきったような言葉から、それが嘘であると知った。
「紗織、寿司でも取ってくれないか?つき合わせちゃって悪いけどお前たちの分も。こういう仕事をやってると落ち着いて寿司なんて食えなくてさ」
言いながら財布から取り出した万札を紗織に渡す。
「真ちゃん」
「頼むな」
俺は仏壇の前に座り、親父と義母に線香をあげた。
持ってきた供物の中身はメロンだ。勿論子供たちに食べさせる為だ。
仏壇に手を合わせながら考えた。
御堂のヤツ、紗織に金を渡してないままバックレやがってるんだ。あの野郎…!
「おじちゃん」
コタツに座った途端、里穂が膝に乗ってくる。出遅れた省吾が悲しそうな顔をした。
「省吾も来い」
大丈夫、俺はデカいから。お前たちの一人や二人、余裕だよ。
「うん!」
嬉しそうに俺の左膝に乗る省吾。俺は右膝の里穂と省吾を一緒に抱きしめた。
「あら、ごめんね真ちゃん重いでしょう?」
その光景にお茶を持ってきてくれた紗織が笑う。
「全然。すごく暖かいな、子供は体温高いなぁ」
里穂と省吾は、本当にとても暖かくて…愛しかった。
俺の最愛の女の血を引く、二人の子供たちは。
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